このたびのブラジル日本文化協会役員選挙で、鮮明になったことが一つある。日系コロニアのエスタブリッシュメント(この場合は、体制とか主流派の意)がすっかり変わったということだ▼戦前、日本移民社会が農業中心ではあったが、落ち着いたころ、サンパウロでは〃倶楽部〃というか、限られた人たちによる社交場が形成された。公館関係者とか、拓殖組合、比較的大きな企業の経営者たちが中心だった。もちろん全員が一世。この主流派は、戦後、勝ち負け抗争で指導力を発揮、そのあと文協を中心としたコロニアの主要団体を運営するようになった▼老いてからは、バトンタッチを、一世体質に近い二世、あるいは準二世に行った。「オレたちの気持がわかってくれる」といった禅譲だと思われる。そして、今度のブラジル人社会でも地位を築いた二世の台頭である▼こうした推移のなかで、戦後移民の出番がなかった。先代ともいうべき主流派から譲られることもなかったし、みずから立ち上がることもなかった。いわゆる「参加しない」だった。〇五年度文協選挙において、ようやく〃やる気〃を起こした。そのやる気が、強く主流を意識した二世層と激突、初の投票選挙に向かったのである▼「われこそ文協運営をやる」と複数候補が現れたのは、文協のために幸いであった。今後、一世がエスタブリッシュメントになるのは困難だろう。対抗するのは、同体質の二、三世だ。これが刺激となって、いつも発展的な競合があればいい。(神)
05/5/6