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コラム 樹海

 失踪宣告―字面(字の並び具合から受ける感じ)は随分冷たい。移民は、この宣告を受けやすい。家族としょっちゅう文通があって、しかも家族に愛されていれば、無縁だが……▼さきごろ、神戸家庭裁判所から兵庫県人会に人捜しの依頼がきた。もし、その人の所在、生死が七年間分からなければ、利害関係者が家裁に請求し、家裁が失踪宣告できるのだという▼県人会への依頼は非常に機械的?で冷たい?ものだった。まず生死を確認したい、生きていたら連絡先はどこか、死んでいたら、日時と場所、現在不明なら最後の消息、ていねいにも、情報をもたらしてくれた人の連絡先も知らせてくれ、とのこと。まず間違いなく遺産の相続問題が絡んでいる▼裁判所の依頼などこんなものだろうとは思うが、第三者としても「イヤな頼みだ」と顔を顰(しか)めたい。これが、失踪宣告が前提の依頼でなければ、逆に、愛する、大切な人の人捜しであろう▼移民、特に単独(独身)移民は、日本の家族に手紙を書かない人が多かった。移住の動機は人それぞれだし、便りをしなかった理由もまた百人百様。「オレは何もかも捨てて来たんだ」と口には出さないが、内心思っている人もいたかもしれない▼紅顔の青年もいつしか中年、初老。親たちもこの世の人ではない。財産相続がほかの血縁者との争いとなれば、日本側は家裁の失踪宣告がほしくなるかもしれない。そうされたくなければ、まずは、宣告されない状況をつくっておきたいところだ。(神)

 05/5/4