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入れ替え雇用が急増=人海戦術でコスト削減=高給社員切り、安く多く採用

5月3日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】国内産業界で入れ替え雇用が急増している。高給社員を解雇し、代りに安い賃金で社員を新たに採用する方式だ。
 二〇〇三年のドン底景気以降、各企業は可能な限りのコスト削減を行ってきた。二〇〇四年は国内総生産(GDP)成長による景気回復で一息ついたものの、今年に入り不安材料が多いことから、各企業はまたも経費削減を余儀なくされている。
 経費削減の最後の道は人件費削減であることから、入れ替え雇用が活発化してきた。従来は古参社員より新入社員の方がより高給というのがブラジルの賃金体系だったが、最近はパターンが変わってきた。
 労働省の統計によると、今年の三カ月間で、労働総人口の雇用入れ替えは、月平均三・九三%と過去三年間で最も多かった。このままの水準で推移すると年末までには四七・一六%となり、過去六年間で最高だった〇一年の四五・九%の記録を塗りかえることになる。
 これによりブラジルの労働者の二人に一人は会社側の一方的解雇、つまりクビ(最近ではリストラと呼ばれている)にされたことになる。これは企業別の統計で、一人で何度も職を変える人もいるので、転職率はもっと高いことになる。
 しかしベテラン社員を解雇すると仕事や操業の効率が下がるため、これに替って数人を新規に採用するという人海戦術が企業間で増えている。昨年末までで、当時の最低賃金三カ月分、七百八十レアル以上の労働者二十五万一千人が解雇され、その代りに新規に百五十三万二千人が採用された。これにより七百八十レアル以下の所得者は百七十八万三千人に膨れ上がった。
 解雇一人につき七人の新規採用となっている。また統計では解雇者の平均所得二千四百四十三レアルに対して、新規の平均は三百八十八・五〇レアルとなり、人件費節減に効果を挙げている。
 いっぽうで一度失業すると、平均で新しい職を見つけるのに一年かかることから、やむなく低賃金で再就職せざるを得ない社会情勢となっている。ある女性はそれまでの三分の一の四百十レアルで再就職した。夫の給料が七百レアルで親子三人では生活できず、背に腹は変えられないと決断した。
 景気の不安材料は金利高とドル安、異常乾燥による農作物の不作などが挙げられる。とくに昨年の景気回復のけん引車となった輸出産業はドル安にあえいでおり、悲観的だ。すでに靴業界は大量解雇や操短を始めた企業も登場してきている。