ホーム | コラム | 樹海 | エボラより怖い暴力という〃病〃

エボラより怖い暴力という〃病〃

 G1サイト11日付によれば、ブラジルで被害届けがあった強姦事件は昨年5万320件。35%しか届け出ていないと推測され、実は14万3千件も起きているかも―と第8回ブラジル治安年次報告で公表された▼前の数字を10万人当たりの発生件数に換算すると25件、後の方なら71・5件にもなる。国連の昨年統計では、同件数の世界最悪はアフリカ南部レソトの91・6件、2位トリニダード・トバゴ58・4件、3位スウェーデン53・2件、4位韓国33・7件、5位ニュージーランド30・9件、6位米国28・6件。日本は1・2件でブラジルの20分の1だ▼一方、昨年のブラジルの殺人被害者は5万806人で、10万人当たりで25・2人。世界の殺人事件の11%はブラジルで起きているが、強姦事件は世界で618万2013件なので、実はブラジルは0・8%に過ぎない▼殺人事件の発生件数は途上国の方が明らかに多いが、強姦事件は先進国も上位だ。生物学的な性的衝動だけでなく、かつて西洋領主が初夜権を主張したような権力意識、抑圧された男性による支配願望のような社会学的な心理も働いているようだ▼死刑がない当地で昨年、警察は2212人を〃処刑〃し、犯罪者は警官を490人殺した。その比率が4・5対1というのは〃正義の勝利〃なのか…▼かくして、この26年間にブラジルでは殺人事件で計100万人が死んだ。それ関し、ヴァルガス財団のオスカル・ヴィリェナ教授は《ベトナム戦争の20年間の戦死者なみ》とコメントした。世界的に大騒ぎしているエボラ熱の今年の死者は約5千人。暴力という平時の〃病〃はエボラより、よほど怖い。(深)