4月30日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】パロッシ財務相は二十八日、経済改革に向けた人事異動でカルドーゾ前政権に国庫庁長官を務めたムリーロ・ポルトガル氏を財務次官に起用した。新次官は財務省を代表して国際通貨基金(IMF)や中央銀行との折衝に当たるが、財務相が採用した保守路線の完成とまで評価されている。同次官には前政権時代、天下のご意見番として前大統領の予算交付要請も断ったエピソードがある。
財務省の人事異動は、不正送金疑惑があるメイレーレス中央銀行総裁に対する捜査要請が最高裁によって受理され、総裁が被告人となった場合への布石とも憶測されている。現在IMFのブラジル代表を務めていたポルトガル氏の次官起用で、経済政策局のリスボア長官は下野する。
今回の人事異動で財務相の周囲は、筋金入りの異名を持つ保守強硬派の面々で固められた。経済政策局を始めIMF出向の二人、中銀理事など四人の高官の異動が、メイレーレス総裁の意見を取り入れて行われた。
フォンテレス検事総長からの中銀総裁疑惑捜査に対する許可申請が、総裁の閣僚扱い審理で最高裁で止まっており、そのためブラジルの通貨政策と政治スケジュールに支障を来している。総裁の疑惑には、脱税や資金洗浄が含まれるので、最高裁の裁決が出るまでは生殺し状態のようだ。
総裁は疑惑審理に困惑し、任期後はゴイアス州知事か上議に納まりたいと考えている。検察庁は、捜査の手が届きにくい外国現地法人の犯罪を洗い出す考えだ。ブラジルを一歩出てしまえば、外国での犯罪は靴の下から足を掻くような捜査しか行われなかった。
ポルトガル氏の名前は労働者党(PT)政権発足当時、中銀総裁候補として上がったが、前政権の一員だったので起用されず、同氏はIMFへ送られた。ブラジルはIMFから離れて一人立ちしたので、もしIMFを必要とする場合、IMF通を政府内へ置くことに政府首脳部はためらわなくなった。
ポルトガル新次官が、政府関係の仕事は重労働のうえ、心ない非難を浴びる酷な役目だと就任の挨拶を述べた。財政黒字をモットーとする経済政策は、国民に職と所得を安定供給することを意味し、同氏の信条だとした。前政権時代は世銀理事とIMF代表を兼任し、給料は一人分しかもらわなかったとジョークを飛ばした。
同次官はカルドーゾ前大統領と初対面の日、百数十人の将軍の遺族らに支払う特別年金を中止するよう進言した。これで数千人の低額年金の財源が確保できると提案した。前大統領は、それは知っているが自分の娘も年金を失う一人だとこぼした。同氏は通貨危機でブラジル経済が動揺する度、IMFの門を叩き借金を乞うた功労者である。
財務相は、リスボア長官の退任を細君の要請に応じたものだと発表した。同長官はペンシルバニア大学で、工業政策と国際市場分析で博士号を取得。しかし、古典派経済学の保守的手法がPT内左派から執拗に攻撃された。同氏はブラジル経済の再建をテーマとする論文をPTへ寄稿し、ルーラ大統領候補の経済政策のシナリオを書いた人物だった。