『聖南西日本語教育史 ブラジル日本語教育史』(八三~〇三年)と、珍しく二つの名がある一冊の本が、さきごろ聖南西教育研究会から発行された。労作である。編纂委員長の尾崎守さんが、ぜひ読んでいただきたい、とすすめている▼本は全ページ、日ポ語対訳。編集者たちが、将来に残そう、特に子孫に読んでもらおう、と明瞭に目的を定めていたことがわかる。本紙ですでに紹介済みだが、日本語教師の集まりである、教育研究会の意図は「二十周年記念事業は出版」であった▼本の全編を貫いているのは、ブラジルのこれまでの日本語教育を支えたのは、戦後移住の日本語教師だ、という自負である。編集者たちが直接にそう言っているのではない。そう読み取れるのだ▼民主主義教育にふれた戦後移住者たちが、来伯して日本語教育を担ったとき、まだ「日本精神を子供たちに教えよう」とする戦前からの教師たちが現場にいた。当然対立が生じた。戦後教師たちはよく凌(しの)いだ。三世が生徒になるころ、ようやく二世教師が登場した▼日本語教育の最盛期といえる時期は、七〇年代から九〇年代の初めであり、戦後教師たちは自らの地位など問題にせず、けっして満足とはいえない待遇に耐えたのである▼今、生徒数も教師数も最盛期の半分。学校に車がなくても二世教師が持っている時代。尾崎さんは、今日までの日本語教育の足跡を顧みて、その長所、欠陥をえり分け、今後の日系社会の発展に役立つ活動を続けて行こうと呼びかける。(神)
05/4/27