天皇陛下と皇后さまがサイパン島へ慰霊の旅に出向くことが本決まりになりそうだ。あの島は硫黄島やパラオ諸島などと共に大東亜戦争のときの激戦の場であり、日本の兵隊や民間人が数多く死亡している。サイパンだけでも軍人は4万人が玉砕しており、民間人1万人が命を捧げ「バンザイクリフ」「ス―サイドクリフ」から飛び降り自決した人々も一杯いる▼英語で記したがバンザイは万歳だしス―サイドが自殺を意味するのは言うまでもない。サイパン島とは言うけれども、若い人々には縁が薄いかも知れない。今は海水浴などの観光で親しみのあるグァム島の西北にある小さな島だが、曾ては日本の委任統治領で沖縄の人々などが移住し製糖産業などに従事し活気のあった島である。その南洋の麗しき島に悲惨さが押し寄せたのは、あの悪夢ような戦争であった▼これら戦争の負の遺産を少しでも清算したいとの考え方は昭和天皇が強く持たれたし、今上陛下もこの志を受け継いでおられる。米軍と激闘した沖縄を7回も訪問され―あるときにはダイナマイトの爆発という不幸もあったけれども、もう沖縄の人々とも理解しあえるようになっている。6月27日頃と予定されているサイパン慰霊の旅も、こうした一連の流れのなかの一つと見たい▼あのマリアナ諸島やミクロネシア諸島は大激戦の戦地であり、マリアナ海戦は今も海軍の兵士らによって語り継がれている。天皇陛下と皇后さまも、このサイパン島の慰霊で心の奥深くに蟠っていた忸怩たる思いにふっきりがつくのではあるまいか―との期待を抱きつつ。(遯)
05/4/23