グルメクラブ
4月15日(金)
既に百歳を超えたロシーニャさん=リオデジャネイロ州バーラマンサ=が三月十二、十三日にアメリカ・サンフランシスコで行なわれた第四回国際×××コンテストの二部門で金メダルを獲得した。最も権威あるコンテストの一つで、前年比三〇%増にあたる五百八十九の×××が四十三カ国から参加、その優劣を競った。近年ブラジルの×××は世界的な関心を集めだしていた。これをきっかけに、拍車が掛かりそうだ。下馬評に上がっていなかったロシーニャさんの快挙について有力紙フォーリャは、「この栄誉ある日を迎えるまで実に百年以上も掛かった」と評し、その健闘を称えた――。
×××と伏せたのは、苦節百年の感動のタネを簡単には明かせないと思ったからだ。ロシーニャさんが世界の桧舞台に立つまでの道程をささやかに実感するためにも、なんだろうとしばらく考える時間を設けたかったからだ。
×××とはスピリッツ、つまり、ジンやラム、ウオッカ、テキーラなどの蒸留酒のこと。カシャッサも含む。ロシーニャはその銘柄だ。いにしえの豪農の家を訪ねるツアーが盛んなヴァーレドパライーバ地方バーラマンサで、一九〇二年からつくられている。
金賞を受賞したのは五年間樽で寝かせたもの。ほかに、十二年、二十五年物もある。話題のロシーニャが飲めるという、バーラフンダ区のカシャッサリア・ポンペイア(電話11・3611・1114)に行ってきた。サンパウロ市で急増中のカシャッサが充実しているバーだ。「充実」の度合いにもいろいろあるが、ここは六百種!以上の銘柄を揃えている。
ロシーニャ五年は一杯四・五レアルだった。十二年は一杯四十五レアルと、標準的なウイスキーの十二年物の相場以上。二十五年はボトル注文で、千二百五十レアルなり。高級フランスワインの世界じゃん。
カシャッサリアと謳うだけあり、品揃えは一目の価値あり。だが、同時に目玉が飛び出る値段の商品も多いのが難点。おいそれとは手が出せない。見えざる神の手で価格が決まると習ったが、ブラジル市場に神はいないの? 希少価値を重視しているにせよ、高過ぎないか。とぶつぶつ文句を垂れつつも、手ごろな値段の品を見つけては試飲に励んでいたところ、葉巻をくわえたブラジル人のオヤジさんが席までやってきた。
「アンタ、どこの回し者かね。日本に輸出したいんだろ、えー」。違う、趣味だ。と返したかったが、ヘラヘラ応じた。葉巻を吹かしながら彼は言った。「十三歳から飲んでいるオレの意見では、だ。カシャッサなんてどれも一緒。値段に惑わされるなよ。高いのも安いのも同じだ。所詮サトウキビなんだから」
なるほど、周囲を見渡せばほとんどビール。カシャッサを飲んでいた客は少数だった。金メダルって、どこの国の話だ?