ホーム | 日系社会ニュース | 日本移民導入のきっかけつくった=杉村公使の墓再整備へ=移民100年記念 岩手県人会、リオで=すでに墓碑文字読み取れず=曾孫の延広氏来月来伯

日本移民導入のきっかけつくった=杉村公使の墓再整備へ=移民100年記念 岩手県人会、リオで=すでに墓碑文字読み取れず=曾孫の延広氏来月来伯

4月13日(水)

 移民賛成論を唱えて第一回笠戸丸移民(一九〇八)のきっかけをつくった、杉村濬駐ブラジル三代目日本公使(すぎむらふかし、一八四八─一九〇六)。同氏はブラジルに骨を埋め、遺体はリオデジャネイロのサンジョアン・バティスタ墓地に埋葬されている。ブラジル岩手県人会(千田曠暁会長)が移民百周年(二〇〇八年)を記念して、盛岡市出身である同氏の業績を称え、墓石などを再整備する方針を固めた。同県人会は近く、墓の管理状況などを調査。改修費の見積もりなどを取る考えだ。曾孫に当たる杉村延広氏(大阪府立大学教授)が五月に、墓参のため来伯する。
 改修計画案は去る二月の総会で提案され、承認された。発案者は、監査役の伊藤春野さん(86)。亡き娘がリオに嫁ぎ、孫が今も同市に在住しているため、ちょくちょく墓前に献花をしている。
 場所は、ブラジルを代表する歌手・女優、カルメン・ミランダの墓のそば。現地の日系団体関係者が個人で、数年前に改築。いつも、小奇麗に掃除してあるそうだ。しかし、既に古びて墓標の文字が読み取れないため、探し当てるには墓番号だけが頼りだという。
 「面積も狭く、一般の人だったら場所が分からないでしょう」(伊藤さん)。以前あった墓石の後壁はもうなく、金目の物は持ち去られてしてまったようだ。
 伊藤さんは「石をひっくり返してつくり直さないとダメだ」と切実に訴え、「この人があったからこそ、移民が来られた。移民導入のために、苦労された人。その功績をきちんと残さなければ」と、熱い思いを込める。
 既に岩手県人会が墓を改修することについて、現地日系団体に話を持ち込んだ。
 同県人会は、九二年五月に貸切バスで墓地を訪れ、掃除をしたりお神酒を捧げるなどして冥福を祈った。千田会長は「墓石にひびが入っていました。その後、心無い人が金目の物を持ち去ったと聞いている」と憂慮している。
 県人会が改修計画を了承したというニュースは、会報で日本に伝えられた。賛助会員の吉田恭子さんを通じて、孫の杉村新さん(元神戸大学教授、81)の耳に入り、(1)いきさつ(2)改修主体(3)費用──などについて、今月七日、県人会にメールで問い合わせがきた。
 このほか文面には「濬の子は六人で、すべて故人。孫は十六人いたが、現在生存しているのは十人だけ。私は、七六年に墓参りに行った。その時は領事館が墓の管理をしており、領事の一人に案内していただいた」などと綴られている。 さらに、来年が没後百年になることにも触れた。吉田さんからのメールによると、杉村元公使の三男英三郎氏の孫、杉村延広氏が五月にブラジルを訪れる予定だ。
 改修費は、会員などの寄付を当てにしなければならないとみられる。千田会長は「移民百周年の年は、県人会創立五十周年に重なることから、会員や県の理解を得られやすいのでは」と見解を示す。
 子孫を初め、現地の日系団体、領事館などを調整して、具体的な内容を詰めていきたい考えだ。