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100万人に「幽霊年金」支給=300万人の恐れも=大半はデータ処理に問題=生きながら幽霊にされた人も

4月8日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】年金受給者百万人が死亡しているにもかかわらず、大部分に「幽霊年金」を支払い続けているという実態を社会保険院(INSS)が明らかにした。これはほんの一部で、実際には三倍の三百万人に達するとみられている。にもかかわらずINSSでは内部データの処理が出来ず、改善にはかなりの時間を要する。三年前に死亡を通告した後、年金が今でも銀行に振り込まれている例もある。受取人不在でいずれはINSSに還元されるが、これらの使途については明らかにされておらず、不正横流し、悪の温床となっていると指摘する声もある。
 INSSが二〇〇三年末までに調べた所によると、死亡したにもかかわらず年金が支払われていた受給者が百万人に達した。このうち故意に届け出をせずに遺族が年金を代わりに受け取っていたケースもあるが、大半はINSSのデータバンクが機能していなかったのが原因となっている。
 市の登記所で死亡診断書が発行された場合、自動的にINSSに通知される仕組みとなっている。通常はこの時点で年金者リストから外され支払いが停止されるが、データバンクに登録されているデータが不十分なため、該当者の割出しが困難となっている。このため支払い停止とならず「幽霊年金」が後を絶たない。
 この「幽霊年金」は七十歳代に最も多く、七十歳から七十四歳までの生存者二百七十四万人に対し、年金支払い対象者は二百九十六万人で約二十二万人多い。七十五歳から七十九歳までは生存者百七十七万人に対し二百二十二万人に膨れ上がっている。八十歳から八十四歳までは百三万人に対し百三十四万人、八十五歳から八十九歳までは五十三万人に対し七十五万人、九十歳から九十四歳までは十八万人に対し三十二万人に年金が支払われていることが明らかになった。
 七十歳以下では実情に合った支払いが行われている。例を挙げると六十歳から六十四歳までは四百六十万人に対し二百八十三万人、六十五歳から六十九歳までは三百五十八万人に対し三百二十一万人となっている。
 「幽霊年金」の受給者数は三百万人とも言われ、その金額は百五十六億レアルに達する。この金額は社会保障省の年間赤字の半額に相当するもので、問題解決が急務となっている。同省では各市の病院や保健所、国税庁、選挙登録所、農地改革院などから情報を得て年金受給者のデータを再作成したいとしているが、肝心の同省のデータバンクの処理能力がついていけないのが現状だ。
 また二千三百二十万人の受給者の再登録を昨年末から実行に移したが、一千二百万人受け付けたところで打ち切った。事務処理が追いつかず、再登録者が長い行列を作り不評を買ったのが原因。
 年金受給者の死亡を隠した不正受取が多いパラナ州では、五年間も家族が受け取っていたほか、年金者用の銀行融資も受けていた例がある。いっぽうでサンパウロ市では、生きながらにして幽霊にされてしまった人もいる。支給が途絶えたので調べたところ死亡者リストに乗せられていた。実は他市の同姓同名の人物が死亡したためと判明した。
 さらにサンパウロ市では三年半前に死亡したにもかかわらず、今も年金が銀行口座に振り込まれているケースがある。死亡当時にINSSに通告し、その後再三通告しているが、常に返事は「目下処理中」とのこと。