4月8日(金)
文協会長選挙に向け、上原、下本、谷の三候補のシャッパが出揃った。これらを眺めてまず気づくのが、全てのシャッパの第一副会長に一世の名前が挙げられていること。そして、同一日系団体の幹部が三候補に分散していることだ。一世中心となった谷候補のシャッパに女性が見られないのも際立った特徴といえる。出馬表明した三候補のシャッパを検証する。
一世と二世の確執につながらねば良いが―――。
今回の選挙によって日系社会が分裂することを危惧する声をコロニアのあちこちで聞く。
確かに、戦後移民の存在を示せとばかりに一世の名前がずらりと並ぶ谷シャッパ。
「(自分も帰化しているし)一世、二世という意識はない」と強調する谷氏だが、当選した場合、二世たちは積極的に文協経営に協力するのか。そんな意見もあるなか、九日の討論会では、当落に関係なく候補者が互助するよう訴える考えだという。
女性不在の理由について谷氏は、「数人に一時は入ってもらっていたが、文協ビル内にある団体関係者であることを理由に辞退された」と意図は全くないことを強調した。
全てのシャッパの第一副会長に一世が名を連ねている。
上原シャッパには、関根隆範氏。吉岡黎明現第一副会長を押しのけての大抜擢だ。コスモポリターナグループのオーナー経営者で、慶応大卒。講道館有段者会の理事でもある。ある現執行部理事によれば、「一世副会長が松尾さんだけになってしまうので、杓田ミヨコさんと関根さんにお願いした」と、一世を意識した組閣であることを明らかにした。
谷シャッパには、小山昭朗ブラジル日本移住者協会会長。一昨年の戦後移住五十周年事業では、重要な役割を担った。
そして、小山氏の盟友ともいえる中沢宏一県連会長は下本シャッパの第一副会長に。
一部コロニアでも中沢氏の動きが疑問視されており、本紙の取材でも、谷陣営との〃橋渡し役〃を自認しているとの話だった。
「確かに小山氏やある報道関係者との間でそういう動きがあった」と中沢氏。しかし、谷候補がその提案を拒否したので合併案は頓挫したという。
先月二十四日に開かれた谷氏の決起集会にも参加しており、「(その時は)谷候補を推す気持ちがあった」というが、下本派入閣を決めたのは、「最初に要請があったから。谷さんから最初に要請があれば、話は違っていた」。では、中沢氏の本意はどこにあるのか。
「上原打倒です」とずばり。県連でも会合を行い、百周年祭典協会副理事長でありながら、レオポルジーナ案に反対の立場を表明していた中沢氏、五日の会合でも、同案を完全撤回するよう上原氏に詰めよっている。
反上原派を自認する中沢氏からすれば、「三候補がでたことで谷さんに有利となったが、それでも目的は達成できる」ようだ。
第一副会長が一世という共通性を見出せるこのシャッパ、同一日系団体幹部が三候補にまたがっていることも特徴だ。
コチア連絡協議会の高橋一水会長が谷派なら、杓田美代子副会長は上原派の第五副会長。
救済会では、第一副会長の吉岡氏が第二副会長、平田光男選任理事が評議員第一書記といずれも上原シャッパだが、会内で発言力が強いといわれる一世理事の相田祐弘氏が谷シャッパの第三副会長に名乗りを挙げている。
ほかに、谷陣営をその広い両肩で支える柔道家の石井千秋氏は、講道館有段者会理事も務める関根氏と相対する。同氏は慶応OB会監事長であり、一方谷派の相田氏は早大OB会長。個人的な繋がりが強いと聞くが、一部〃早慶戦〃の様相を呈してきたとの声も。
現執行部の正監査役からは下本八郎、永堂ジョルジ、山本エジソンが上原陣営と袂を分かったのも注目していいだろう。
ともあれ、同じ理念を持ち、同じ団体で仕事をしている同僚も文協選挙上は反目の立場となり、困惑する関係者もいるようだ。
◎
昨日掲載されなかった谷シャッパの正・補充監査役のシャッパを掲載する。▽正監査安達敬之助(島根県人会長)、奥山啓次(トゥッパンプレス社長)、新留静(マレットゴルフ協会理事)、金子謙一(画家)、中村和右(元文協副会長)▽補充監査長友契蔵(宮崎県人会長)、角谷博(マヤ旅行者社長)、天野高明(工業者移住者協会理事)、山本恒夫(バンデイランテス射撃協会長)、馬場康二(ブラジル日本語センター評議員)の十氏。