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「禁酒法」で殺人事件急減=ジアデーマ市=酒場は夜11時まで=警官ら毎日巡回し摘発=なせばなる犯罪対策

4月1日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十七日】サンパウロ州ジアデーマ市は九〇年代に毎日殺人事件が発生し、サンパウロ州内で犯罪ランキングのトップの座を欲しいままにしていた。しかし、二〇〇二年七月に施行された市条令により犯罪は急減、昨年は殺人事件が平均月十件まで減少した。この条例は、アメリカが一九二〇年に施行したマフィア撲滅を狙った禁酒法にちなみ、「夜十一時以降の禁酒法」と呼ばれた。これまで犯罪とくに殺人は飲酒がもとで口論となり発展した例がほとんどで、さらにバールなど酒場の百メートルの範囲内で発生していたことから、禁酒法は効果を上げた。さらに市当局はファベーラ(スラム街)を整備、道路を舗装して街灯をつけ、要所に二十六台の防犯カメラを設置し犯罪防止に努めた。市当局は二週間前、殺人ゼロの目標を掲げた。
 ジアデーマ市の殺人件数は九九年の三百七十四件をトップに、九八年は三百四十五件、九六年は三百二十四件と、サンパウロ州一の犯罪王国だった。これが〇二年には二百一件、〇三年は百六十七件、そして昨年は百二十九件まで減少し、過去最低を記録した。
 ピーク時は毎日一件の殺人事件が発生していたが、昨年は一カ月平均で十件となった。サンパウロ州内でのランキングはそれまでのトップの座から一挙に十八位へと後退した。
 同市の人口は三十八万人で、三十キロ平米にひしめき合っている。一キロ平米当たり一万二千人という人口密集地帯だ。これに対して、バールなどの酒場が四千八百軒もあり、全国一と言われている。一キロ平米当たり百六十軒、あるいは人口八十人に一軒の割合となっている。
 市当局では飲酒が殺人の原因で、しかも夜十一時以降に最も多いことが調査で明らかになったことを受けて、〇二年七月に市条令で当該店の営業を午後十一時までと規制した。当初は同条令を順守する店はまばらだったが、市監督官、軍警、市警が共同で巡回して摘発を行ったことから規制は徐々に浸透していった。
 四千八百軒のうち二十八軒が十一時以降の特別営業が認められているが、残り四千七百七十二店は十一時閉店を余儀なくされている。巡回は現在でも毎日続けられ、一週間に五、六店程度が摘発されている。店主は客にせがまれたとか、なかなか帰ろうとしないなどの言い訳をしている。いずれもシャッターを降ろすが、脇の入口を開けて目立たずに出入りできるようにしていた。摘発は、初犯は警告のみで終わるが、再犯は罰金、三回目には営業禁止処分となる。
 このほか市当局は、防犯対策として悪の巣と言われるファベーラの区画整備を行った。道路を舗装して街灯をともし明るくするとともに、要所要所に二キロ先まで撮影可能な防犯カメラを設置した。これを現在の二十六台から年内に百台まで増設する意向だ。
 さらに青少年の非行を防止するため、市当局は専門技術を身につける職業訓練所を開設した。十四歳と十五歳を対象としたもので、在籍数は一千三十八人に達している。市では各生徒に奨学金として月百三十レアルを支給している。
 いっぽうで人口の増加にともない、失業率が一五・七%という高率となっているが、市の財政赤字が三億三千五百万レアルに達しているため、思うように対策が進まないのが現状だ。このほか、ファベーラを中心とした麻薬取引の取り締まりが功を奏さないのが、頭痛の種となっている。