3月11日(金)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十日】ウンベルト・コスタ保健相は九日、公立病院統一医療保健システム(SUS)の医師に、婦女暴行により不本意な妊娠をした場合、被害証明書やそれに類する証明がなくても中絶手術を行うことを許可すると発表した。刑法では同ケースの被害者の警察への被害届提出義務を免除していたが、前政権は中絶前の被害証明書の提出を義務付けていた。暴行による妊娠の中絶手術は罰せられないが、資格取り消しなどの後難を恐れて医師らは敬遠していた。
妊娠中絶手術手続きの簡素化は六月までに、新たな保健省省令をもって定められる。これまで難しかった合法的中絶手術が容易になることで、論争が起こりそうだ。宗教団体は、保健省が中絶手術の普及に手を貸していると抗議運動を始めた。
刑法第百二十八条は、婦女暴行の犠牲者が第三者に不幸な事実を公表する義務はなく、被害証明は不要と定めている。しかし前政権は九八年、中絶手術を施した医師に手術の合法性を証明するように義務付けた。
新省令は警察か裁判所への被害届提出を勧めるとしているが、被害者本人が届け出を拒否しても手術の実施には差し支えない。本人の要望があれば、手術に応じるよう指示している。医師は中絶手術が後日、婦女暴行の結果でないことが判明しても、司法裁決を恐れる必要はないという。
刑法第二十条細則一項では、手術当時の事情で中絶手術を施した後に誤りが判明しても、手術施行の理由が母体に危険があるなど納得できるものであれば合法としている。同省保健委員会は、さらに中絶が合法となるケースを検討する。
宗教団体の言い分は、婦女暴行の被害証明が不要となったことで、全ての中絶手術が婦女暴行による妊娠になるというのだ。妊娠とは天の祝福であり、カップルの誤算による結果ではない。妊娠を粗末にする民族は、天の祝福から外され衰亡の道をたどるという。
保健相は被害証明の免除を、中絶手術の奨励と誤解しないよう呼びかけた。同省保健委員会は新省令で、前政権による被害証明要求との相違をハッキリさせるという。公立病院の医師にも、妊婦の安易な要請に応じることを避けるよう警告すると述べた。
保健審議会(CSN)は九日、脳に障害のある胎児の妊娠中絶を賛成二十七票、反対三票で可決した。CSNの決定は法的効力がないが、SUSの医療方針として取り入れられる。最高裁が承認すれば、政府は法令として制定し、公立病院の公式プログラムに加える。また子宮内の異常による変形胎児の妊娠についても、CSNは決議を行う。
脳に障害のある胎児は、妊娠十二週目の超音波検査で判明する。最高裁は同ケースに認可判決を下したが、後に取り消した。しかし、超音波検査で異常が確認されれば、中絶を認める仮処分を出した。裁判所は過去十五年間、三千人の脳障害胎児の中絶手術を許可した。専門家の話によれば、脳障害は脳死ではない。産児は喜怒哀楽を無邪気に表現するので、母親にとっては心痛となっている。