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総力開発した最高品質の車=トヨタ新型ハイラックス=ブラジルでの販売は5日から

3月4日(金)

 【ブエノスアイレス発=小林大祐記者】三月一日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたトヨタ自動車の新型ハイラックスの発表会。高級リゾートホテルのイベント会場はトヨタカラーの赤色を強調した幻想的な照明で彩られた。アルゼンチン全土から集まった報道陣に加え、ブラジルのメディア約百二十社も参加する中で、注目のグローバル戦略車のベールがはがされた。
 「十年以内に中南米市場シェア十%を目指す」。トヨタ・メルコスルの岡部裕之社長は宣言した。
 これは現在のほぼ二倍にあたる。メルコスル(南米南部共同市場)のシェアでも、四%台にとどまっているのが現状だ。
 ただ、昨年は好材料が多かった。ブラジルで製造しているカローラの売れ行きが順調で、前年比二割増の五万以上を販売。中型セダン市場をリードする。新発売のフィールダーも予想を上回る販売数を示した。アルゼンチンでもハイラックスが過去最高の生産台数一万九千台を記録するなどポジティブな年だった。
 今年の一つのめどは、アルゼンチンとブラジルで十万台生産すること。岡部社長は「ラテンアメリカ全体の生産・輸出拠点として、メルコスルがますます重要になる」と言い切った。中南米市場でのシェア拡大を見込むトヨタにとって、新型ハイラックス投入の成否が目標達成の重要なカギを握っているのは確かだ。
 その市場となる中南米の自然環境は多彩で、山間部には悪路も多い。現地の声を聞き、ピックアップに望まれるものを最大限すくい上げ、開発に反映させたのが新型ハイラックスだ。細川薫エグゼクティブチーフエンジニア(ECE)は、「様々な状況に対応する、最高品質のグローバル車」と紹介した。
 最新型のコモンレール式エンジンを搭載し、パワーと燃費効率をアップ。荷台も、ライバル車のフォードレンジャー(フォード)、S10(ゼネラル・モーターズ)のそれをしのぐ。ゆったりくつろげる座席や、たくましさと柔らかさが同居する車体のデザインも改良点だ。
 細川チーフエンジニアは「ハイクラスの車に仕上がったが、値段は従来と変わりない」と胸を張った。
 その背景には部品の国産化率を上げ、コスト削減が可能になったことがある。ハイラックスでは五十社だった現地部品メーカーとの取引が、新型ハイラックスでは六十二社に増えた。
 トヨタ・メルコスルの勝田富雄副社長は「新型ハイラックスの部品は七百五十点のうち、六百点がアルゼンチンで生産されたものだ」と説明した。
 残りはブラジルの部品メーカーからの輸入に頼るが、生産の現地化計画は着実に進んでいる。「一年後にはブラジルのインダイアツーバ工場からプレス関係の生産設備を移設する」と、岡部社長は明かした。トヨタの真価が問われるグローバル戦略。その準備にぬかりはない。
 地元代理店の反応はどうか。ブエノスアイレス近郊にある「アサヒ・モーターズ」。敷地内に広いテストコースを持っており、アルゼンチンでの販売が開始された三日、カクテルパーティーを兼ねた試乗会を企画した。
 千五百人の顧客に送ったという招待状で、「レヴォルシオン・トタル(すべてを一新)」と太文字でアピール。これまでに例のないピックアップであると強調した。
 昨年の新車販売台数は四百五十台。「ハイラックスがその七割を占めた」と、ヴィクトル・ナイマルク社長。購入者の多くは農場主だ。ピックアップ市場はアルゼンチンの自動車市場全体の十%。ナイマルク社長は「今年は六百台」と強気の目標を掲げた。
 グラシアノ・エステヴェス営業部長は「旧型はエンジンが非力で、競合車に劣っていたが、今回のバージョンでは負けない」と自信をのぞかせた。
 トヨタはアルゼンチン、ブラジル両国だけで今年、新型ハイラックス二万六千台の販売を目論む。ブラジルでの販売スタートは五日からだが、ティーザー広告(商品や商品名を隠す広告)の効果もあって前評判はすでに高い。「六千六百台の予約がある」と関係者はいう。価格は六万五千~十万レアルで、ブラジル市場では一万六千台の販売を予定する。
 二〇一〇年までに、世界市場の一五%までシェア拡大を目指す「グローバル15」計画について説明した稲葉良み(目ヘンに見)トヨタ専務は語った。
 「計画実現に向けては中国、インド、ロシア、そしてメルコスルの各市場がキーポイントになる。ブラジル・インダイアツーバ工場で製造されるカローラは二十カ国以上に輸出されているなど好調だ。(アルゼンチン工場で生産開始される)IMVでさらに飛躍したい」