3月2日(水)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙七日】リオ国立大学人類学科のマリア・C・カヴァウカンチ教授は、庶民の祭典リオのカーニバルが表の華やかさとは裏腹に、背後で暗躍する麻薬組織によりイメージに傷がつくリスクを負うと警告した。同教授は九〇年代にサンバクラブやパレード主催者の活動実態と、動物賭博の胴元との関係を調査していた。
カーニバルに潜む危険は、麻薬組織が違法活動の隠れみのにして利用する事実だ。サンバクラブは徐々に汚染され、庶民の祭りは麻薬組織に侵されているという。
最近マンゲイラのロブソン・ロッケ会長が殺害された事件は、その端的な例といえる。事件はパレードの女王選考で、麻薬組織の命令に背いた報復といわれる。賭博組織の関与と麻薬組織のそれとは全く異なると同教授は警告する。
賭博組織は一般市民との社会参加を強調し、パレード優勝にこだわる。麻薬組織は注目の的になることを避け、社会参加は眼中にない。麻薬組織の関与は冷酷。指示に従わなければ、処罰は情容赦がない。
カーニバルは本来、美女も醜女も参加でき、肥満も枯木も平等、悪人も善人も含め全ての人に門が開かれている民主的な祭りだ。貧民街の住民もクラブに入れば、パレードの先頭に立てる。二十年前は上流階級と下層階級で別れていたが、最近は垣根が外された。
もう一つの民主的な点は、パレードの優劣選考基準に八百長的要素がないこと。普段軽視されることが、ここで重視されるのも良い。カーニバルで、自分の持ち味を見い出す人もいる。見方は価値観の相違もあるから普遍的ではないが、庶民の祭りに違いはない。
一九八四年にサンバ会場が建設されてからカーニバル産業が生まれ、儲かるビジネスとなった。雇用創出も起きた。財政的に豊かなクラブが優勝できる可能性も高くなった。こんなクラブは入会費も高い。ここから民主的祭りが崩壊しつつあるのも事実だ。
カーニバルの後援者は、十九世紀から賭博業者と決まっていた。九〇年代に主な賭博業者が、次々と逮捕された。この逮捕劇がマンゲイラのように、麻薬組織のつけ入る隙を与えた。これはサンバクラブだけではなく、下層階級に属するリオ市民の日常生活にも麻薬組織が席を占め始めた。
賭博業者のカーニバル後援を是とはしないが、麻薬組織が代役に入るよりはマシだ。賭博業者には社会との共存があるが、麻薬組織にはない。麻薬組織は陰に潜んでにらむ猛獣、即時見返りを求む。賭博業者もならず者だが、麻薬組織はその比ではない。情状酌量の余地は全くない。
賭博業者や麻薬組織とは無関係のサンバクラブ、ウニードス・ダ・チジュッカやウニオン・ダ・イーリャなどもある。金のかかるサンバパレードは、庶民の祭典カーニバルを毒しつつある。カーニバル・チャンピオンの座を得るための資金援助がエスカレートするのは邪道であり、麻薬組織の介在を許す。