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仮釈放中に悪事重ねる=犯行後は刑務所へ=戻る前にピンガを一杯=身元保証人は親戚や知友

2月25日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十二日】セミ・アベルトと呼ばれるブラジル特有の仮釈放制度で出所した受刑者が犯罪を重ねていた事実が明るみに出て、司法関係者の責任問題と合わせ制度の見直しが求められている。世間では野獣を野に放つようなものだと厳しく批判している。仮釈放者は夜には刑務所に戻る規則になっているため、事件発生後、警察は足取りがつかめず捜査が長びくケースが多い。まさか犯人が刑務所にいるとは思わないからだ。また、ある事件では刑務所内で逮捕するという笑い話みたいな事が起きている。さらに盗んだ車で毎日「出勤(?)」、夜は刑務所の駐車場に置かれているのに気がつかなかったり、刑務所に戻る折に、バールでピンガを引っかけ一日の疲れをいやすなどの規則違反は日常茶飯事だという。
 ブラジル独特の仮釈放とは、刑期の六分の一を全うした受刑者に与えられる権利で、日中は通学あるいは通勤のために出所し、夜は戻ることが義務付けられている。これには刑務所内の専門検査官が日常の行動をチェックし、模範囚で向学心あるいは勤労意欲があり、更生の道を歩んでいると判断した場合に申請を行い、司法局が仮釈放の許可を判断する。
 許可には身元保証人が必要で、勤務先のオーナーが契約書とともに署名するのが前提となっている。当局は定期的監視巡回をすることになっているが、人員不足を理由にひんぱんには行われていない。いっぽうで身許引受人となっているオーナーは、ほとんどが個人商店を営む受刑者の親戚や知友で、なかには家族から脅迫されて渋々引き受ける人もいる。
 欠勤や遅刻は当局に報告の義務があるが、引受人はこれを履行せず、逆に皆勤で勤務態度は良好と偽の報告を行っていた。たまたま巡回員が来て受刑者が不在の場合は、所用で使いに出したと嘘の証言をしていた。
 実態が明るみに出るきっかけとなったのは今月七日、サンパウロ市モルンビー区で四人組の強盗犯が現行犯で逮捕されたことにある。グループは中高級住宅街で家人が外出するところを脅して侵入、金品を強奪していた。サンパウロ市南部のモルンビー、ブルックリン、モエマ、カンポ・ベーロ各区で三十件以上の被害があり、警察では一味の犯行とみて追及している。このうちの十二件については罪を認めたという。実はこの一味のうち、主犯格を含む二人がベレン区刑務所の仮釈放者だった。足取りがつかめなかったのは彼らが刑務所で夜を過ごすためだった。
 主犯格の男は六回の強盗事件で禁固二十三年の刑を受け服役したが、昨年末、同市北部の教会の雑用をすることで仮釈放となった。身許引受人となった教会の神父によると、教会に通って来る母親と妻が泣きながら頼んだため、断り切れずに承諾したという。男は二十日ぐらい後には姿を消したため当局に通報したが、何の音沙汰もないことで放置しておいた。
 共犯の男も知友の肉屋に勤めたが、脅迫まがいの態度を取るようになり、やがて行方が知れなくなった。肉屋の主人は仕返しをおそれて当局には連絡しなかった。
 これらが明るみとなったことで当局は、現在仮釈放となっている百二十人の出所を急拠取り止めるとともに、実態調査に乗り出した。その結果、過去に車を盗んで強盗を働いた仮釈放者が盗んだ車で「通勤(?)」し、夜は刑務所職員用の駐車スペースに車を置いていた事が判明した。結局男は刑務所で寝ていた所を警察に踏み込まれ逮捕された。
 過去の余罪で服役中に再逮捕というのはよくある話だが、新たに悪事を働き、刑務所内で手錠をかけられて警察署に連行されるのは前代未聞の話だ。また仮釈放者が仕事を終えて(これはまじめな仕事)午後七時半の刑務所行き最終バスまで、近くのバールでピンガを飲みコインゲームに熱中していることも明らかになった。