2月23日(水)
ブラジル岐阜県人会(山田彦次会長)は二十日午前十時過ぎから同会館で定期総会を開き、アクリマソン区にある現会館を売却し、総工費七千五百万円をかけてサンパウロ市郊外に新会館を建設する方針を承認した。日本移民百周年祭典協会(上原幸啓理事長)が優先記念事業に掲げる日伯総合センター構想には、県人会に入居してもらうためのフロアーが図面に描かれているが、同県人会は独自の建物を建てることを総会で確認した。
「こういうものを作って、日系社会をどういう方向へ引っ張っていきたいのかが見えない」。山田会長は総会を前に、日伯総合センターをおおきく報じる二十日付けエスタード紙に首をかしげた。
「今の文協や百周年を引っ張っているのはエライ人が、日系社会の将来の設計図を描けないなら、どうやってついていくのか。ただツインタワー建てると言われても困る」。
〇三年十月に、梶原県知事を迎えて県人移住九十周年・県人会創立六十五周年式典を挙行した時、山田会長は同年を「思考元年」ととらえ、県人会の将来のあり方を模索すると宣言をした。その結果、昨年暮れから、独自の取り組みとして「寺子屋教室」と「絵画教室」が始められた。
同総会挨拶の中で、山田会長は「ブラジルの中で日本人らしい匂いのする日本人を育てたい」と同教室の主旨を説明した。「寺子屋」には七~十歳ぐらいの子どもを集め、会員の有志が折り紙や書道などを教えている。
「礼儀作法を知り、挨拶がきちんとできるようにする。県人会を将来担ってもらい、日本との付き合いを続けることを考えれば、できるだけ日本語に重点をおきたいと考えている」
母県もさっそく協力する姿勢を見せてくれており、来週にはダンボール四箱分の教材が届く予定だ。
県人会生き残りをかけ、日系社会の将来像を模索する独自の取り組みを始めた山田会長は、「せっかくの百周年なのに、今のところ建物の話ばっかり。しかも、資金集めに協力してくれたら優先的に入居できるとか、まるで不動産屋のようなことを言っている」と語った。
文協会長選挙が先週から邦字紙の話題をさらっている。「このタイミングでこんな記事がでるなんて、あせりとしか言いようがない」。有力伯字紙で記事を出したり、サンパウロ市議会で日伯総合センターの説明会を行ったり、コロニアでの説得より、ブラジル社会での既成事実化を進めている現状を分析する。
「寺子屋教室」活動を本格化させるには、現会館は元住居で構造的に制限も多く手狭であり、古いために補修にかかる費用もばかにならない。
新会館の資金は、県庁・県民・県人会会員で二千五百万円ずつ負担する形で拠出する予定だ。今年五月頃には、建設委員会メンバーが母県へ赴き、理解を求める。「二〇〇八年の百周年には、岐阜新聞社も花火大会を約束してくれている。多くの慶祝団が来伯してくれる絶好の機会。その時に竣工式をすることを目指したい」という。
「全ては会員の熱意が基本。どんな形でも、できるだけの協力、助言をお願いしたい」と同会長は重ねて要請した。
建設用地として、グアルーリョス市付近が候補に上がっている。
なお、総会には十七人が出席。承認された〇四年度会計報告では前年度繰越金九千二百七十二レアル、収入十三万六千五百五十八レアル、支出十三万千二百八レアルだった。〇五年度への繰越金は八千六百二十二レアルで、一万一千レアルが会館建設基金用の会計に別途計上された。
今年度から作られた新会館建設の会計予算の収入は一万一千レアルの繰越金に加え、十五万七千五百レアル、交通費・訪岐経費などの支出は三万三千九百レアル、差し引き十三万五千レアルを残すのが目標だ。
会館建設資金協力者として申し込みがあったのは、母県からは今井良観、徳原修、中島健次、桂川浪子、田口紀子、近藤博道、近藤美貴子。ブラジル側では山田彦次、足立建紀、杉村紀彦、原田敏彦、坂智恵、清水ルイザ、浅野悟、青山高夫、国井宏裕、金子亨資、日比野健一(敬称略)。