さきごろ亡くなった二世女性の奈良県人会長、有北和田之示さんは、日本語会話の敬語、謙譲語をいい先生について習いたいと、しきりに口にしていた。県人会長になって母県の要人と接するようになり、必要を痛感していたのだろう▼ポ語は、目上の人への尊称は相当あるようだが、動詞、助動詞などにかかわる敬語がない。だから、それを意識している日系ブラジル人は、日本人のしかるべき人と話すとき、困った、と思う▼日本の若い人たちにしても、敬語に乱れがある、と言われて久しい。さて、その若い人たちだが、少なくとも、本社にやって来る記者諸君は、目上と同等年代に対する言葉はしっかりと使い分ける▼電話の応対では、相手が〃コロニアのおじさん〃で、目上の場合が多いので、ていねいな言葉遣いをする。「(電話は)また後でかけさせていただきます」。実は、この程度にていねいになると、かえって相手に通じない。通じると、相手が目下とわかるのか、嵩(かさ)にかかって横柄になる人もいる。本当の話である。もう少し普通に?言ったほうがいいと、助言する始末だ▼要するに「おじさん」たちはていねいな言葉に慣れていないのだ。敬語は本来、自分と話す相手の距離を自覚して用いるものだという。移民社会は、距離を自覚しなくても、生活できたのである▼有北さんは、ポ語ばかり話してもいい環境から外に出る機会が増えたので、これではいけないと意識したようだ。そんな二世は多くない。(神)
05/2/23