2月17日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】政府与党労働者党(PT)は十五日、下院議長選で万全の態勢を敷いて臨んだが、歴史に残る痛恨の敗北を喫した。表決は決選へもつれ込み、三百票対百九十五票で「聖職者くずれの頭領」の異名を持つセヴェリーノ・カヴァルカンチ下議(大衆党=PP)に賜杯を譲った。下院執行委員の選出でも、PTは完敗した。政府の政務担当相は、敗北の原因究明のため関係者を招いた。新下院議長は「新時代の到来」と就任の辞を述べた。
十三時間半にわたった下院議長選は、PTにとって悪夢の一夜となった。政治戦略の最重要拠点を失ったのだ。下院執行委員会にもPT議席は皆無という惨状だった。今回は政府の手土産戦法による神通力が、効かなかったようだ。敗軍の将グリーンハルフ下議は政府の敗北と弁解し、ルーラ大統領は党の敗北と責任をなすり合った。
票割れの原因となった議員の不満について、腹を割って話し合うよう大統領は苦言した。原点に戻って反省をしないと失敗を繰り返し、二〇〇六年の大統領選に影響すると述べた。敗北の間接的原因は、二月に予定されている内閣改造にあるとみられる。
PT下議らは、敗北の責任をラベロ議会対策委員に帰した。根回しが拙劣だというのだ。同委員は近く、お役目御免のリストに入っている。ジェノイーノPT党首は、ギマランエス下議を責めた。同下議が得票した百十七票は、カヴァルカンチ下議へ流れたからだ。これがグリーンハルフ下議に入っていれば、当選できたと悔しがった。
党方針を無視、呼びかけにソッポを向き議長候補に固執したギマランエス下議の処分は、大統領が不問とした。メルカダンテ上議は、敗北が党内の情報交換不足を証明したとし、今回の教訓を政治改革に役立てると述べた。PT議員や党員の政府に対する不満が、うっ積していたのも事実らしい。
そればかりか下院執行委員にPTから一人も出ず、法案審議の進行状況を知らせる下院中枢部の耳を政府は失った。政権獲得後の二年間、立法府と行政府の間を取り持ったクーニャ前議長の活躍が懐かしくなる。
下院第一副議長は、自由戦線党(PFL)から選出された。第二はノゲイラ下議(PP)、第一書記はオリベイラ下議(ブラジル民主運動党=PMDB)、第二書記はカピシャーバ下議(ブラジル労働党=PTB)、第三書記はゴメス下議(ブラジル社会民主党=PSDB)の面々だ。
今回の議長選では見返り戦術が功を奏さなかった。予算交付や役職提供、優先扱い、党籍移動などのエサに議員らは動じなかった。ギマランエス票がカヴァルカンチ下議へ流れたのは、そんな政府のエサに食い飽きた意志表示とみられる。戦場の口約束は、反故にされるものが多い。
政府与党が票集めで見せるタップ・ダンスは、鼻に付くと連立与党からも嫌われたようだ。グリーンハルフ下議は、PTの染み抜きだという陰口もある。PTの政治手法が目先の利益を優先する迎合主義だとする、連立与党議員の離反もあった。一方で勝利の歓声を挙げたのは、PFLとPSDBだったようだ。金融市場は、新下院議長の選出を冷ややかに迎えた。カントリーリスクも二ポイント上がった。