2月16日(水)
【ヴェージャ誌】ブラジルのような独立自営の精神が旺盛で、高リスクの無許可営業などに挑戦する民族は世界でも珍しい。イギリスのビジネス調査機関GEMレポートは、独立志向があると答えたブラジル人は全体の一三・五%を占めると発表。独立精神を最も尊ぶ米国人の一一・三%より高く、世界平均を五〇%上回る。統計だけを見れば、ブラジル人は世界有数の独立志向民族だ。
独立して経営する環境は外国と比べて決してよくない。独立を目指す理由となると、ブラジルの場合は喜べない。他に生きる方法がないからが五〇%を占める。この観点から見ると、ブラジルはウガンダやペルー並みだ。
ブラジル人の生活環境はドン底にある。生きるためには、無許可露店商のような高リスク業種でも挑戦する。露店商の営業許可は、申請しても出ない。市役所の監督官が毎日、商売道具一式を没収にくる。監督官の監視の目を盗んで、キョロキョロ商売に勤しむ。
露店商ばかりではない。餓死線上にある人々に残された最後の拠り所、無許可営業は全て徹底的に弾圧される。人民の味方を宣伝文句に政権を取った政党でも、権力者の席に就けば手のひらを返したように情容赦しない。人民は虫ケラだ。
しかし、独立自営の精神が成長すると経済の原動力となる。技術革新と雇用創出につながる。独立心の育成は、世界への挑戦だ。先進国は成熟社会のため、独立精神は低い。先進国の市民は、安定した生活と職業を求める。先進国では独立精神が死語となりつつある。
EU諸国と米国では、独立自営の精神が大きく異なる。歩合給を恐れて固定給を求めるのはEUで三〇%、米国は一六%。事業に失敗して閉業に追い込まれた場合、米国は一巻の終わりで済む。しかし、EUは敗走者を追跡して、肩身の狭い思いをさせる。EUでは再起はほとんど不可能だ。
ブラジルの経営環境は世界でも最低クラスだが、七転八起の精神は旺盛。GEM調査が質問した、駆け出し経営者の六五%は経営の基礎知識もないし素質もない。しかし、雑草のように強靭な独立精神がある。盲蛇か怖い物なしだ。
教育はないが、処世術を知っているという人が多い。匹夫の勇というなかれ。商売を広げて有能な管理職を採用し、ブラジル有数の企業に育てた立身出世の人物は多いから、ドンブリ勘定などと侮れない。