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◇コラム 樹海


コラム 樹海

  久しぶりに「国援法」という言葉が本紙紙上に出た。東洋街の大阪橋の袂にテントを張ったホームレス(家無し)日本人についての記事の中である▼記事内容は、総領事館の担当官が、この日本人から助けて下さい、との依頼があれば、事情を聴く、その結果、国援法の適用もありうる、というようになっている。要は法律にしたがって、日本政府が帰国旅費を立て替えて日本に帰国させるということだ。あくまで、本人の意思次第で、帰国したくない、と表示すれば、法律は適用されない▼戦後移民が渡航終盤にかかった、一九六〇年代の終わりころだったが、国援法帰国者が多かった。ブラジルに渡航はしてきたが、いろいろな理由で生活が立ち行かなくなった人(家族)が明らかになり出したころだ。言いかえて、落ちこぼれともいった▼帰国させるか、否かの相談・審査は援協が窓口になっていた。帰国させてもらいたい人が、相談の途中、意のままにならなくて、当時の事務局長を短銃で撃ったこともある。そのころから十数年経て、いつのまにか「国援法」をあまり聞かなくなった。戦後移民の生活が、良くても、悪くても、安定したのである▼新移民がいなくなって、移民は高齢化の時代を迎えた。今後、一世が死に絶えれば、この法律の適用を受けるのは(企業の駐在員はあり得ないだろうから)少額の費用でやって来る旅行者くらいだろう。戦後移民はみんな永住のつもりで渡伯した。今後も国援法帰国者になどなりたくない。 (神)

05/02/16