2月15日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】米通商代表部(USTR)のパウロ・ソテロ元代表は十二日、米州自由貿易圏(FTAA)構想を向こう二年間保留し、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドの決着に米政府は専念すると表明した。ブッシュ米大統領は七日、財政赤字削減のため農産物補助金で五億八千七百万ドルをカットする声明を発表した。しかし一方では、〇五年度の同補助金を前年の百億ドルから二倍以上の二百四十億ドルに引き上げることを決定したという。
米政府の財政赤字削減とドル安政策が意図する本音は、推測が難しくなった。米州自由貿易圏構想(FTAA)の推移を、固唾を飲んで見守っていたブラジルの輸出関係者は肩すかしを食ったようだ。米国の通産省に相当する通商代表部(USTR)は、ブラジル側提案に関心がないと通告した。
硬直状態にあったFTAAは二月二十三日、バハジアン伯代表とオルガイヤー米代表の間で最終会議が持たれ、結論が出ないと二年間の保留となる。米大統領は一日、第二期政権の施政方針を発表、FTAAには政府も議会も無関心であるかのように何も触れなかった。
ゼーリックUSTR前代表は、FTAAで結論を出せないまま国務次官に就任する。同前代表の談話では、中米地域との自由貿易協定は大詰めで合意し近日、条約締結の運びとなるという。
ブラジルが関ヶ原とみる舞台は、FTAAからWTOに移ることになりそうだ。ドーハ・ラウンドは、〇七年六月が裁決期限。同ラウンドの裁決結果が、FTAAへ大きく影響すると予測される。〇七年にWTOは未決着で農産物も未解決となった場合、米議会は農業法を法令化し、農業補助金カットも永久に葬るだろうと米前代表は表明した。
ドーハ・ラウンドに最も関心を持つのはブラジルではなく、中国を中心とするアジア諸国といわれる。中国は巨大人口を抱える大所帯で、現在の経済成長率維持が至上課題という深刻なお家の事情がある。
ウゲネイ駐WTO伯大使は十五日、オルガイヤー米代表とジュネーブでドーハ・ラウンドに向けた準備会談を行う。米政府が設けている数々の輸入障壁が、焦点となる。会談後はWTOへ提出する米案を伯代表がブラジルへ持ち帰り、関係者と検討する。それから伯案を米側へ提示する。
現在ダンピング法を適用され係争中のオレンジ・ジュースに始まり、各種農産物と工業製品が目録に名を連ねている。ブッシュ政権では、ブラジルがカナダに次いで二番目にWTO対米提訴の多い国となっている。
WTO提訴の三分の一が対米提訴で、ブッシュ政権は国際間で訴訟好きの政府とみられている。一方、ブラジルは知的所有権について三月三十一日期限の経済制裁対象国となっている。
ようやく国際貿易で頭角を現したブラジルは過去二年間、貿易黒字で健全財政に漕ぎ着けた。国際市場におけるブラジル産品の台頭が注目される中、輸出品の七八%が下、中級クラスの技術産品なので、産業開発研究院(IEDI)が警鐘を鳴らしている。これらは早晩、中国や韓国、メキシコに追い上げられる産物とみられる。