2月15日(火)
ブラジル日本文化協会の吉岡黎明副会長によれば、最近、上原幸啓会長が会長選に再出馬する腹を固めた。その一方、文協の一部理事が中心になって「文協を考える会」を昨年十月から組織し、すでに二百人を超える支持者がおり、対抗シャッパを出すかもしれないとの推測が流れている。というのも、四月十六日に予定されている定期総会で選ばれた会長が百周年祭典協会の理事長にも就任する可能性が高いためで、各方面からの注目が集まっているようだ。
吉岡副会長は十四日、ニッケイ新聞社の取材に対し、「上原さんがもう一期やると決めていると聞いています。だったら、もう一回やろうと僕も覚悟を決めました」と語った。
「確かに、対抗シャッパが出るかもしれないという噂は聞いています。我々としては、百周年も文協改革も中途半端になりますから、今投げ出すわけにはいきません」と執行部を代弁した。
定款によれば、四月十六日の定期総会の十日前までにシャッパを事務局に提出しなければならない。
「多少の異動はあるだろうが、基本的には現在の会長・副会長が続投する形で行く考えを持っています。例え、もう一つのシャッパが出なくても、次は何に力を入れてやるとかの方針は発表するつもりです」
対抗シャッパに対して執行部が最も恐れるのは、百周年記念事業見直しという選択肢が生まれることだ。下手したら、昨年来の苦労が水の泡になる可能性すらある。
一方、二百人を超える支持者のいると言われる「文協を考える会」代表、小川彰夫文協理事(広報マーケティング理事、国士舘スポーツセンター担当理事)は、「今の文協と百周年は近すぎて、外から見ると区別が分かりにくい。これは本来の姿ではない」と主張する。上原会長ら執行部の複数が百周年協会の要職を兼ねている現状を指摘する。
その上で、ヴィラ・レオポルジーナの日伯総合センターに代表される記念事業の考え方に対し、「文協が、先人の歴史や恩義の詰まったリベルダーデから出るなんておかしい」と考え、「本来どうあるべきか、もう一度文協を立て直す必要がある」と訴え、静かに支持を広げている。
昨年十月頃からずっと水面下の動きを続けてきたが、四月の理事会選挙を目前に活動が表面化してきた。
小川理事は、国士舘スポーツセンターの運営方針を利用者に相談するために頻繁にサンパウロ市近郊を訪れ、酒を酌み交わす付き合いを重ねる中で、赤字額を減らし、協力者を増やしてきた。「国士舘で得た経験を文協全体に広げたい」と語る。
九五年の日伯修好百周年以来、ジリ貧状態だった文協会員数が昨年末、いきなり百人以上も増えた。小川理事が一人一人説得して入会してもらった成果だ。
前回までは評議員会が会長・副会長を指名し総会が承認していたが、民法改正により、会員がシャッパを提出し、総会で会員が投票して選ぶことになった。
理事会シャッパに名を連ねるのは、会長・副会長ら理事二十六人。加えて、会計監査の正・補充十人も選ばれる。昨年の定期総会の出席者数が百六十三人だったことを考えれば、小川理事が入会勧誘した百人の存在は大きい。
一部で、「小川理事自身が会長になりたいから、考える会をやっているのでは」という憶測が流れていることに対し、「違います。我々のシャッパの会長はまだ決まっていません。大事なのは、ちゃんとした選挙を通して、文協のあり方を会員に問うことではないでしょうか」と語った。
「日系コミュニティの力はまだまだあります。もっとネットワークを広げなくては」と考え、昨年来「文協ネット」という、インターネットで各地のコロニアを結んで情報のやり取りを活発化させるプロジェクトを進めており、今年から文協予算にも組み込まれた。
◎ ◎
「百周年を機に、日系社会の団結を」を旗印にしてきたはずの祭典協会が、足元の文協から揺さぶられる異常事態となっている。このままでは、分裂が進むばかりといった様相すら呈しはじめている。
やる気のある人、結果を残せる人を上手に活かして、会自体を活性化させるのが本来の組織論。リーダーの腕の見せ所だ。ルーラ大統領訪日を五月に控え、この辺で、仕切り直しする良い機会かもしれない。