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北東部観光の影、児童売春=背後に貧困、家庭崩壊=観光客の2、3割はセックス目的=市当局、条例で規制強化急ぐ

2月4日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙三十一日】北東部地方が観光地として脚光を浴びている。とくにヨーロッパからの直行便の乗り入れもあって、常夏のパラダイスとして人気上昇中だ。彼らにとってブラジルの物価は「チョー安」で、海岸沿いの家やホテルまたはアパートの一室を購入して休暇の拠点にしている。政府や地元も観光産業に注力していく構えを見せており、観光客は今後も増加するとみられている。しかし、その裏でセックス産業が栄え、中でも児童売春が急増して社会問題となっている。その背景にはブラジルでも最低レベルと言われる貧困問題が横たわっており、家庭内暴力や性的虐待に堪えられず家を飛び出し、売春に身を置くのがお決まりのコースとなっている。彼女らは稼いだ金で自由きままな生活をしており、悲惨な状況はうかがえない。

 観光客は海水浴や名産物、料理など本来の観光のほかに、セックスツアーを目的としている。全体の二〇%から三〇%はそれに該当するという。ドイツで警官をしているという観光客は、フォルタレーザ市で夜になると繁華街の一角に集結する女性群に「これまでタイなどの東南アジアに行っていたが、一箇所にこれだけの売春婦を見たのは始めて」と驚いていた。旅行の目的はズバリ「セックス」と明かす。
 また七十歳のイタリア人は、我々にとってはわずかな金だが、彼女らにとっては大きな収入であり、「双方に喜ばしいことだ」と笑う。ブラジルでの代金は自国での一箱のタバコ代か二本のビールに相当する金額だという。彼と一緒にいる少女の姿は、まるで祖父と孫娘が仲良くビールを飲んでいるような光景だ。
 少女らは五、六人のグループで行動し、ほとんどが十六歳未満で海岸や街角で寝起きしている。中でも最年少のマリア(仮名)は十三歳というが、どう見ても十歳にしか見えない。彼女はフォルタレーザ市の中でも極貧地区のファベーラに住んでいたが、七人の子供を持つ母親が食べる物がないことから子供らに八つ当たりして暴行を働く毎日だった。実の父親の顔は知らないが、義父に性的虐待を受けるようになり、十歳の時に家を飛び出した。
 当初は物乞いをして生計を立てていたが、今の仲間と知り合いプロとして自立した。五十レアルという格安の値段と子供らしさが受けて結構売れっ子となっている。彼女は「仲間がいて楽しいし、服や靴を買い好きな物を食べられる」と喜んでいる。たまに家に戻って母親に金を与えると神様のように扱ってくれると笑う。また着飾った姿を見て、近所の少女らが親同伴で、「一緒に連れていって仲間に入れてくれ」と頼むという。
 貧困の中で生まれ育った彼女らに将来の設計図は皆無に等しいが、中にはヨーロッパから「夢に出てくるような王子様」が現われ、結婚して外国に連れていってくれると真剣に考えている子もいる。
 またベテラン組で馴染み客が多い、いわゆる顔役は、新入りに客をあっせんして分け前を取っているのも数人いる。彼女らは子供が産まれ養育に手がかかる間、現役を離れて「口入れ稼業」で生計を立てている。
 いっぽう、フォルタレーザ市やナタル市の繁華街のバーやナイトクラブでは、未成年子女を無料で入場させて外国人観光客にサービスさせ、飲み代の中からリベートを払う店が増えている。また店の奥に「休憩室」を設け部屋代を徴収しているところもある。
 市当局は社会問題だとして、警察と青少年保護団体と共同で今年上半期中に発令すべく、児童売春を規制する市条例を検討している。現在の法律では十四歳以下の女子の売春は禁止されており、買春も罪になるが、警察によると買春側が年齢を知らなかったと開き直ったらそれ以上追及できないのが実情だという。