歴史が誤って書かれるのは耐えられない。みなさんが証人になり、書き改めてほしい――アリアンサ(ミランドポリス郡)信濃村の長老、新津英三さん(八十九歳)がそう言った、と昨年末の信濃毎日新聞が書いた。田中康夫長野県知事が、昨年十一月同村を訪問した際、同行取材に来た記者の記事である▼新津さんの発言は、アリアンサ移住地の建設が満州信濃村の基(もと)になったと記述した、日本で発行された複数の書籍(九七年、〇〇年出版)への「反論」である▼文字どおりの「国策」で満州信濃村へ送り出された移民から多くの死者が出た。村は、長野県人だけで村づくりしようとする郷党的親ぼく思想が核になって建設されたという▼アリアンサの信濃村は、長野県人によって建設が企画されたが、入植希望者は全国から募られた。重要なのは、民間人の独自の、自由意志によって企画されたという事実で、他から押し付けられたものでない▼田中知事は、訪伯前よく調べていた。本紙記事にあったように「国から命じられたのでなく、それぞれの覚悟と意志で、ここに移り住んだ。高い使命感に感銘を受けている」と現地で述べた。現在の歴史認識や教科書の記述は必ずしも正しくない、とまで言及した▼信濃毎日新聞によれば、書籍を執筆した元高校教師は、歴史をまとめ直したいと言っている。新津さんの言う証人には知事がいる。書き直しは行われるだろう。また、ぜひ書き直してもらわなければならない。 (神)
05/2/4