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コラム 樹海

  ブラジルは強烈なサンバのリズムに心が踊っているが、日本の二月三日は「豆撒」である。昔の一世移民は、どうしたわけかこの古くから伝わる慣習を忘れてしまったらしい。あるいは、笠戸丸や旅順丸の頃にはまだ豆が普及していなかったのでついつい―も考えられるのだが、それにしても不思議で面白い。そう言えば、ブラジルの歳時記にも「豆撒」は見当たらない▼煎った豆を一升枡に入れたのを撒きながら「鬼は外・福は内」と大きな声で叫ぶ。この豆を拾い自分の年よりも一つ多く食べると無病息災になるの言い伝えがあり、子供らは大喜びしたものである。ところが―である。近年は豆の替わりに落花生を撒いて商売繁盛を願うところがあるそうだ。大阪の通天閣でも地上100メートルの展望台屋上から景気回復を願い縁起物の落花生が勢いよく撒かれた▼話はなお続く。一般的には「鬼は外」が普通なのだけれども、「鬼は内」と唱える地域も多い。東京の恐れ入谷の鬼子母神(仏立山真源寺)では「福は内・鬼は内」。宮城県の村田町でも、渡邊綱が、この地で伯母に化けた鬼に腕を取り戻された、鬼が逃げてしまったので、鬼が逃げないようにと「鬼が内」となったし群馬県鬼石町も、鬼が投げた石で町ができたの説話がありやっはり「鬼は内」なのである▼「鬼やらい」と呼ぶところもあるが、これは「追い払う」の意味であり、「豆撒」も鬼や悪魔を家から追い出すの想念がいつのまにか生活習慣に取り入れられたものに違いない。  (遯)

05/2/3