1月29日(土)
ブラジルの相撲が、世界中で読まれているニューヨーク・タイムズ紙二十七日付けで、好意的に大きく扱われた。サンパウロ特派員のテッド・ベンソン記者が配信したもので、「日系人が相撲を継承し、他に伝えている」との見出しで報じた。
同紙の発行部数は百二十万部だが、ホームページを通して読む人は、全世界に千八百万人もいるという。ブラジル相撲連盟の赤木正利会長は、「世界有数の大新聞に取り上げられたのは初めて。大変光栄です」と喜びを隠せない様子で語った。
ベンソン記者から取材を受けた移民史料館の大井セーリア館長は、「この記者はサンパウロに住んでおり、以前から日系コロニアについての記事を書きたいと思っていたと言っていました。彼はNHK国際放送を視聴しており、そこで相撲に触れて、今回の記事を思いついたようです」と語る。「戦争やら災害やら、最近は暗い記事が多いので、明るい話を書きたいとも言っていました」。
記事では、ブラジルには百五十万人という世界最大の日系社会があり、元学生横綱の池森ルイスなどの選手を輩出している。相撲愛好者は二千人を数え、うち非日系人が七割を占め、ブラジル社会への普及が進んでいると紹介する。
一九一四年に最初の相撲大会がサンパウロ州のグアタパラで開催された日本人移民史をひも解き、移住地時代にはコーヒー袋をまわし代わりに使って練習していたなどとも記述している。
十二年間日本の相撲界で活躍し昨年帰国した黒田吉信さん(元若東)にも取材し、「小さな頃から相撲は、僕にとって人生の大きな部分を占めていました。だからプロになるために日本へ行こうと決心した」とのコメントも掲載された。「相撲は僕にとって単なるスポーツ以上のもの。文化を継承することでもあります。そのために、僕が日本で学んできたことを子どもたちに教えたい」。
世界的な新聞で報じられるという快挙を果たした同相撲連盟。土屋守雄オスカル副会長は、次の夢はブラジルから横綱を出すことだという。
「体格、体力などいろいろ課題はあるが、いつの日かそうなって欲しいと思っている。大きな夢です。今は七割が非日系人だが、それでも日本の伝統や精神、礼儀や仁義を残していきたい」と熱く語った。