1月28日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】貧困撲滅がクローズアップされている中、十八日の国連発表によるとブラジルでは十三地域で一千六百万人が極貧層にあると指摘された。その中で、ランキング最下位がペルナンブッコ州マナリ市だ。国連によると、調査した百七十五カ国中、百五十位にランクされたハイチと同水準だという。マナリ市は農業地帯だが、度重なる干ばつで農作物は育たず、市の収入はゼロ。全て連邦政府からの交付金と貧困家庭手当(ボルサ・ファミーリア)で生計を立てている。町は正式な地図に載っておらず、市民は「悲惨な町」と呼び、しかし生まれ育った故郷を捨てようとせず、ひたすらに「生きる」努力をしている。
マナリ市は州都レシフェ市から四百キロ離れ、一九九五年に市制が敷かれた。それまでは忘れられた存在だったが、昨年の国連による調査で人間開発指数(IDH)が〇・四六七と世界貧困ランキング百五十位のハイチと並び、ブラジルの極貧でも最下位と発表されたことで一躍脚光を浴びた。
同市は人口一万三千五百人を有する農業の町だったが、定期的に見舞われる干ばつで主産品のトウモロコシやフェイジョンが全滅し、ほぼ毎年飢饉の有様。辛うじて生き残る家畜用の牧草を刈り取っている。このため一千七百八十五家族が貧困手当で生活しているため、市民の平均収入は、一カ月七〇レアルに満たない。全市民のうち定職を持っているのはわずか百六十二人で、このうち百四十二人は公務員である。市の収入はゼロで、ブラジル地理統計院(IBGE)の統計によると同市は二〇〇〇年、連邦政府から月額十四万三千五百レアルの交付金を支給されたが、その七〇%は人件費に費やされた。
同市には二千九百戸の家があり、市内と農村部に分かれている。病院もなく、上下水道の設備どころか水処理も行われていない。銀行も裁判所も皆無。全戸数のうち十二戸が屋内に配水管があり、四十二戸が井戸を有している。残りは全て給水車が補給しているが、溜める場所がないため、野外に穴を掘り、水溜め場としている。また、七百四十四世帯が便所を有するが、水洗ではなくこえ溜めだ。ほかは全て野外に穴を掘り用を済ましている。
当然ながら衛生状態は最悪で、産後十二カ月以内の幼児の死亡率は一五%を超えるという。連邦政府が建設した病院はあるが、設備が皆無で、空き屋にするのはもったいと、市役所の執務室になっている。一月に就任した市長は何とか医者を連れて来たいと願っている。
学校は小学校が二校あるのみ。昨年のユニセフの調査では、全市民の八〇%が文盲となっている。教育観念は低く、子供らの平均就学は二・九年と近隣の市の四・三年と格差が出ている。ただ、たまに給食があると、在籍する生徒全員が顔をそろえるという。
子供二人を抱えた男性は、食べ物がなく牧草をかじるのは日常茶飯事だという。また病身の夫と六人の子供の母親は貧困手当九十五レアルを支給された時、夫の薬か子供らの食料を買うかの二者択一をせまられ苦しむ。さらに家族全員が空腹で目が回りそうになるという。しかし、ここで生まれ育った彼らは、移転などは眼中になく、「何故マナリ市だけが良くならないの?」と問いかけながらも懸命に生き永えることに努力している。