1月21日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】五百万ヘクタールの果樹栽培面積を有するブラジルは、果物生産で中国、インドに次ぐ世界第三位を占めている。年間売り上げは百億レアル(ブラジル地理統計院発表)に達するにもかかわらず、輸出は一〇%にも満たないことが明らかになった。世界の果物の流通市場は年間二百五十億ドル(国連機関公表)であり、ブラジルの世界進出がいかに遅れているかが伺える。
ブラジルからの輸出のトップはミカンに代表される柑橘類で、濃縮ジュースを中心に年間二十六億ドルと、三八・八%を占めている。第二位はバナナで、十八億ドルと一九・九%を占める。第三位はブドウの十二億ドルで全体の一〇・二%。このほか、パパイア、マンゴー、カジュ―、パイナップルも輸出されている。
ブラジルの輸出が遅れた原因は、世界各国の厳しい検疫体制と輸送手段がネックとなってきたため。国内での販売は、仲買人によるいわゆる農園渡しか、中央市場での問屋への却売りとなっており、検疫にはさほど神経を費やしていない。しかし輸出の場合、高温による細菌の消毒や冷凍が必要となってくる。
世界の安定した高値市場を獲得するには、これらは不可欠な条件で、関係者は将来に向けて発想の転換が必要だと強調している。現に今年から始まった日本向けのマンゴー輸出や、アメリカ向けパパイアなどは先方の厳しい検疫をクリアーしており、ブラジルの信用度を高めた。イタリア向けにパパイアを輸出している大手農場では、検疫や包装などで生産コストは四〇%高くなるものの、販売価格は国内の五倍にもなるとして、手間ひまをかけることが安定した高収入につながるとの見解を示した。
一方、輸送の途中に商品が擦れ合って外傷ができ、商品価値が下がる問題がしばしば発生しており、商品のパックや包装形態の改善が課題となっている。さらに船積の場合、港湾に冷凍保管設備が不十分なこともネックとなっている。
農務省関係者らは、ブラジルの果樹栽培者の八〇%は二ヘクタールから五ヘクタールの中小農家で、輸出用の設備投資は負担が大きいため、協同体を結成して集中管理や協同出荷を行うなどの方法を模索するのも一つの手だとしている。