1月19日(水)
【カルタ・カピタル誌】工業政策の権威であるケンブリッジ大学のアジ・シン教授は昨年十二月にカンピーナス大学に招かれ「ブラジルが過去二十年間工業政策に失敗したため、人口の膨張に応えるための雇用が創出できなかった。そのためブラジルは、所得格差の是正に真剣に取り組み、外国の例にもっと見習うべきだ」と訴えた。
次は同教授の講演後の質疑応答の内容。
【工業政策が国家発展の鍵とは】過去五十年間に進んだグローバル化で最も恩恵を受けたのは、その目的をよく理解した東南アジアの企業だ。東南アジアは国際市場に合わせたのではなく、自分の都合に合わせて市場を操作したといえる。
日本企業がその模範を示した。続いて韓国や台湾が模倣して成功。いまは中国とインドがその法則に従っている。南米諸国は米国の指導に従ったが、結果は失敗だった。
ブラジルは六九年から八〇年までの間、世界一の成長率という奇跡を成し遂げながらモラトリアムに陥った。世界を失望させただけでなく、国民のやる気を殺ぎ、国家を無気力状態に陥れた。
南米諸国は八〇年代、経済が低迷した。同じ頃アジア諸国は、フィリピンを除き順調に成長した。ブラジルは八%の成長経験があるが、二〇〇四年は五%に過ぎなかった。何年間五%の経済成長率を保てるかで、ブラジルの本質的な問題が見えてくる。
経済成長率が低いのは経済政策が慎重で、投資家を刺激するような画期的な策がないからだ。ブラジル経済は投機家の食い物になっている。政府はこんな拙劣な政策を二年続けていたら、いずれ投機家をとるか企業を救うか、二者択一を迫られることになる。
【政府の執るべき道は】金融より生産が大切なことに気づくこと。途上国は低利政策を採り、投機をよく管理する。外資は気まぐれだから、気をつける。対外収支を狂わせる輸入の管理も厳重に行う。求職に見合う雇用を創出するには、労働人口の年三%増加に対し六%の経済成長率を目標とする。現状の金融優先政策を続行するなら、失業の悪夢は絶えない。
【弱小企業の延命法は】先ず高い採算性が、先決条件。採算性が高ければ、融資を調達できる。低採算性では話にならない。採算性が企業の利益と発展の鍵だ。利益は再投資し、利益配当は最小限に留める。
【利益計上のための政策は】途上国政府は利益確保を税制で管理し、企業の再投資を促進する税制恩典を与えること。国際金融仕手筋の暗躍に注意する。途上国の国民による汗の結晶を、ムザムザと持ち去られないように注意すること。
【ブラジルの工業政策は】政府自身の音頭で投資促進を図らねば、途上国では効果的な投資は起きない。投資は管理次第。多様な投資があって、管理者が回収と配当を保障する。管理者グループには、労働組合や投資家も参加する。