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第2の人生ボランテイアで=老人介護生きがいに=シルバー世代生き生きと

新年号

04年1月1日(木)

 第二の人生をどう過ごすか――。コロニアにおける移住者一世の平均年齢は六十七、八歳だとみられる。もちろん正確な統計が出されているわけではないが、多くが第三世代に属するとみてよい。核家族化の進む日本では、高齢者向けのボランティア・サービスが充実している。最近、注目を集めているのが、高齢者ケアだという。シルバー世代が、お年寄りを介護、ボランティア自身の生活の質を高めるからだ。ブラジルでは、〃生涯現役〃を貫く移住者が少なくない。第二の人生に踏み出し、ボランティアに生きがいを求める人たちを追った。

車椅子押し園内散策=84歳の高橋さんが世話

 介護の必要なお年寄りにも緑豊かな園内を散歩させてあげたいーー。
 サンパウロから車で四十分のグアルーリョス市ピメンタ区。かつて、日系人用の別荘地として売り出された地に救済会(左近寿一会長)が老人ホーム、憩の園を営んでいる。
 十アルケールの敷地内には桜、紅葉、杉、椿など一世には懐かしい樹木がみられる。
 しかし、入所者九十人のうち約五十人が特養ホーム(マルガリーダ館)で生活。一人で外出することが出来ない。主婦や定年退職者らを中心にした有志八人が月に二回、憩の園を慰問。車椅子を押して、高齢者と散策を楽しんでいる。
 「人のために尽くして、喜んでもらえらなるなら、それ以上の幸せはありません」。世話人の高橋幸太郎さん(八四、山形県出身)=サントス市=は熱っぽくそう語る。
 グループの旗揚げは九七年四月だった。バザールの共同経営者(故人)が憩の園に入所。聖公会(英国国教会)の伊東宏司教(当時牧師)と見舞った。職員の不足で、特養ホームのお年寄りを満足に屋外に連れ出せないと幹部がもらした。そこで、伊東司教が協力を約束。教会員の中から有志を募り、活動をスタートさせた。
 救済会は池の周囲約四百メートルに遊歩道を整備、ボランティアスタッフを後押しした。高橋さんはラジオ体操の友人も誘い、協力者は八人に増加。施設がミニバンで送迎している。
 散歩のコースは池に沿って一周。遊歩道の半ばにベンチが置いてあり、そこで一休み。その後、残り半周する。途中、坂道もあるので、移動といっても楽ではない。人によって三、四往復し、結構な肉体労働だ。
 以前は、個々に回っていた。現在は一旦、中間地点に入所者を集め、童謡などを歌う。十一月十九日のこの日、『ふるさと』や『炭坑節』、『上を向いて歩こう』など数曲を合唱した。しなやかな柳風が吹く中、声を出して快適そうだ。「皆一緒だとやっぱり楽しい」(高橋さん)。
 ガン病院での裁縫、心身障害者施設や老人ホームでの療育音楽、散髪の無料奉仕…。亡き妻、美代子さんは生前、様々なボランティア活動に力を注いだ。そのため、高橋さんも各種慈善運動・団体に接触する機会に恵まれた。
 「薄幸な人生だったんです。妻には本当に苦労をかけた。労苦に報いるためにも、ボランティアに励んでいきたい」
 十五歳で移住した高橋さんは満足に教育を受けることが出来なかった。定年を過ぎてから、ブラジル学校に入学。小学課程から始め、高卒の資格を取得、専門学校にも通った。文章を書くのが好きで、邦字紙に積極的に投稿している。
 陸上ベテラーノ会所属のスポーツマンでもある。昨年、五時間二十分で三十キロ完歩を成し遂げた。健康な体を授かったからこそ、目標が達成できたと反省。真っ先に憩の園で暮らすお年寄りの姿が思い浮かんだ。
 「信じるものには永遠の命がある」。聖書の言葉を引用、ボランティアに対する決意を表した。