12月25日(土)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十四日】ルーラ大統領は二十三日、個人の尊厳に対する畏敬と家族の絆がブラジルに最も欠けているとして、その二つを〇五年度の目標に掲げた。このキャンペーンは、全広報機関を通じて国民に訴えるという。特に家庭の崩壊が未成年売春につながり、家族の団結が犯罪防止につながると述べた。大統領の実家は、貧しくも母親を中心に助けあい尊敬しあったので、三人の妹は売春婦にならなかったと語った。
大統領は、ブラジルの最も深刻な問題として個人の尊厳への畏敬と家族の絆の欠落を指摘、プラナウト宮に記者団を招き、朝食の席上で〇五年度目標のキャンペーンとして明示した。キャンペーンが効を奏するのは、国民の魂に訴え、心の琴線に触れる時だという。
〇四年度キャンペーンの標語は「ブラジルが最も誇りにすることは、ブラジル人であること」。これはお金をかけずに、絶大な効果が得られる。ブラジル人であることを誇り、国民の士気高揚に何ら支障はない。しかし、誇りはコレステロールのようなもので、悪性の誇りと有益な誇りがあると述べた。
政府が広報活動のテーマとして常に考えたことの中に、多くの人々が路上で生活し、家庭と家族の絆というものを知らない問題があった。人は家庭崩壊の原因を家の外に探し、家の中を見ないと大統領は諭した。
現代の風潮は、往年と異なる。全ての共同体の基となる家族の絆は薄れ、自分のルーツである両親への尊敬は軽んじられ、今日の繁栄を築いた高齢者への感謝の念は忘れ去られ、未来の功労者となる児童を虐待する。畏敬の念が薄れて自己中心主義がはびこるなら、社会は貧困化して行くとした。
生活水準向上のため、両親は子供に愛情を注ぐ時間を失い、ベビーシッターやお手伝いさんに子供のしつけを一任する。こうして育った子供は、両親が老いれば両親を粗大ゴミのように養老院へぶち込む。畏敬の念が欠落した社会の悪循環はこのように続く。子が親を「姥捨山」に放棄する現状がブラジルの実態なのかと大統領は糾弾した。
家族の一員としていかにあるべきか、自分の子に教育したかを国民一人一人に問うという。独身時代は家庭の大切さが分からない。家族の誕生日など歯牙にもかけないし、絆などうるさいと思う。結婚すると違う。もう少し妻子を大切にする。これが一般の風潮と大統領はみている。
大統領は自身の母親に触れ、ブラジルの家庭はすべからく大統領の実家を模範にせよといった。夕飯に食べるものが無くても、あるものを分かち合う団らんを持てという。団らんがあれば、貧困家庭といえども、売春で極貧から抜け出そうなどと考えないと大統領は述べた。
畏敬の念について大統領は、ベトナム戦争当時米国防相だったマクナマラ氏の著書「戦場の霧」に触れた。同氏は当時のジョンソン大統領に「ベトナム人も人間であり、畏敬の念を大切にして戦争は止めるべきだ」と進言したという。キャンペーンは、政治活動ではなく社会運動だとした。テレビドラマのように社会へアピールすることだという。