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3自治体が誘致合戦=ブラジル総領事館新設巡り=駐日大使は「浜松優先」

12月21日(火)

 総領事館誘致で、三自治体が火花ーー。東京・名古屋に続き三番目となるブラジル総領事館の誘致合戦が三つ巴の様相を呈してきた。すでに駐日ブラジル大使館(東京)に要望している広島県、大阪府に続き浜松市への設置を求める静岡県も十七日に石川嘉延知事らがイヴァン・カナブラヴァ大使を訪問し、要望書を手渡した。都市の規模やネームヴァリューでは大阪が群を抜くが、国内最多の日系ブラジル人を抱える浜松市、歴史的なつながりをアピールする広島も地元に総領事館を誘致することのメリットを最大限に訴える。今後も、三自治体が繰り広げる激しい誘致合戦に要注目だ。
 出稼ぎ労働者に増加に伴い増加する日系人と、定住化が進む現状に対応するには総領事館機能の強化が不可欠とブラジル政府は、総領事館の新設を検討してきた。
 官民一体となった運動を展開し、ブラジリアにも市職員を派遣するなど積極的な動きが目立つ浜松市。浜松市を中心に静岡県西部には三万千人の日系人が住むだけに、浜松ブラジル協会の石川エツオ会長らが中心となり九月から署名活動を展開し、二万九百八人が賛同した。
 十一月には石川会長や市職員らが署名と北脇保之市長の親書をブラジリアの外務省在外ブラジル人支援局に直接手渡すなど、熱心さは群を抜いている。
 また、今月十七日には石川知事が駐日大使館を訪れ要望書を手渡したほか、同行した北脇市長も「設置は浜松に住むブラジル人の切なる願い」と熱く訴えた。
 府内在住の日系人こそ、約五千人に留まるものの、近畿二府四県では約二万人となることから、大阪市では府と市、大阪商工会議所、関西経済連合会が一体となって、国内第二の都市への誘致を目指す。
 今月十五日に、四者が連名でカナブラヴァ大使に要望書を提出。日系人の人口だけでなく、日伯間の経済交流に役立つと「商都大阪」の価値をアピールしている。さらに、十九の総領事館と五十二の名誉領事館が立地し、関西領事団が形成されている関西圏での政治的な利便性も要望書には盛り込まれた。
 広島では地元での圧倒的な購読率を誇り、世論形成に大きな役割を持つ地元紙中国新聞が十一月二十二日に「ブラジル総領事館 実現したい広島誘致」と題した社説を掲載した。
 十月下旬に総領事館新設の情報を得た広島県では情報収集を進め、十一月十一日に昨年の戦後移住五十周年式典でも来伯した藤田雄山知事が知事としては最初にカナブラヴァ大使を直接訪問。西日本の中央に位置する地理的な利点▽戦前から多くの県人が移住している▽昨夏には広島県人会館を新設するなど交流が熱心ーーなどと誘致の理由を説明した。
 三自治体から「求愛」された格好のブラジル政府。十七日の石川静岡知事が訪問した際、カナブラヴァ大使が「浜松は総領事館設置において最も優先順位が高い都市」と答えるなど浜松市がやや有利との感もあるが、まだまだ予断は許さない。

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