ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 最低賃金、300レアルに決定=来年5月から=所得税調整は期待以下=倍増公約には程遠い

最低賃金、300レアルに決定=来年5月から=所得税調整は期待以下=倍増公約には程遠い

12月17日(金)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十六日】政府は十五日、最低賃金を〇五年五月から三百レアルへ増額、所得税(個人)免税額は千五十八レアルから千百六十四レアルに引き上げると発表した。最低賃金の調整は年間インフレ率九・三%を上回るが、大統領選挙での倍増公約にはまだ程遠い。〇三、四年度を累計すると引き上げ幅は一二・六六%に過ぎない。最低賃金が法令化された一九四〇年の物価指数で換算すると、当時の最低賃金は、現在の八百六十四レアルに相当する。

 新最低賃金は、閣僚六人と労組代表四十人の出席のもとに決定された。政府は最低賃金の引き上げにより、八十億レアルの支出を余儀なくされる。そのため来年度予算をさらに引き締め、財源捻出を図ることになる。
 これで社会保険院の累積赤字が、三百億レアルに膨張する。政府が国会へ提出した来年度予算案は、年初の予想最低賃金二百八十三レアルで起算し、五十五億三千万レアルを計上していた。最低賃金が三百レアルとなったことで、さらに二十四億七千万レアルを捻出する必要がある。
 政府は最低賃金の倍増公約を任期中に実現するため、公約実行委員会を設置する。委員は政府と財界、労働者、年金取得者などの代表から選出する。労組は今回、最低賃金三百二十レアルを要求した。しかし、地方自治体が税制改革で財政難に追い込まれ、労組案に難色を示した。
 最低賃金の引き上げは、長短の二面がある。労働者の家計を助け、所得格差の是正に役立つ一方で、多数の失業者を巷間に送り出し、労働契約がないアングラ市場へ労働者を追いやる。企業は、社会保障負担金の増額を強いられる。非正規労働者の半数は最低賃金以下で就労し、貧者への一灯と歓迎している。最低賃金が一〇%増えると、貧乏人が一・二%減るという。
 他に、使用人や家政婦など、最低賃金をベースとした給与基準で働く契約労働者も多い。〇三年の統計によると、正規労働者総数二千三百七十万人のうち、最低賃金で就労する者は一二%に過ぎない。正規労働市場では、最低賃金引き上げによる喜びの声があまり聞かれないようだ。
 最低賃金引き上げによる影響が大きいのは、建設業界。給与体系が、ピラミッド型になっているからだ。本給が最低賃金で、プラス・アルファーを歩合給で受給する労働者などは、解雇の憂き目から免れる。
 最低賃金相当の年金受領者は現在、千四百万人いる。このレベルの年金は、低額所得者支援と所得格差の是正に貢献するので、社会保険院の累積赤字に計上するのには異論がある。社会保険院の累積赤字が、増額調整を行う度に最低賃金の足を引っ張っている。
 所得税の調整は予想より少ない。免税額は、これまでの月収千五十八レアルから千百六十四レアルに引き上げられた。千百六十四レアルから二千三百二十八レアルまでが一五%の税率、二千三百二十八・〇一レアル以上は二七・五%の税率で、扶養控除額はまだ最終決定が出ていない。