12月11日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】連邦検察庁は九日、マルフ元サンパウロ市長が政府高官の協力を得て政府機関の中に汚職構造を築いたと起訴した。元市長の逮捕状請求は却下されたが、起訴状は第二刑事裁判所で正式に受理された。元市長は、高官がらみの犯罪組織構築で裁かれる。被告人が起訴状コピーを国外の友人へ送り、ブラジルで法廷決着をつけるため外国で処罰されることはないと伝えたメモを、検察庁は裁判所へ提出した。
起訴状二通には、元市長の子息フラヴィオ、息女リジア、娘婿マウリシオ・クリ、嫁ジャケリーネ・コウチニョの四人も名を連ねている。元市長は六日に検察庁に呼び出され、不正送金の出所を尋問されたばかりだった。
メモには「親愛なる友へ。私の勝訴があなたに伝えられる見通しだ。ブラジルでは自分の思いどおりに裁判が行われる。これから先、民事も刑事も裁判沙汰で煩わされることはない」と記し、十月三十一日と十一月一日の新聞が添付されていた。
元市長が外国での処罰を免れるとしたので、検察庁が不審に思った。罰則消滅の記述は官庁の紋章やサインのない便せんに書かれていたが、様式は公文書のもので、元市長が内外の政府機関の特別庇護下にあることを暗示する内容だった。
検事らは、三人の政府高官が犯罪組織に加担しているとみている。犯罪組織は、元市長の陣頭指揮で内外に政府機構がらみの汚職構造を築いた。ブラジルの外為法と税法を組織的に潜り抜け、違法行為を行っていたという。
裁判には、ジョビン最高裁長官のアドリエネ夫人も証人喚問される。同夫人は二〇〇一年に金融監督審議会(COAF)の会長としてスイス検察庁と同件で折衝した。COAFでは立件不可として同件を取り下げた。その後、同件は検察庁扱いとして引き継がれた。
一方、元市長の弁護団は八人の証人を用意した。三人は国外居住者、レバノンの元大統領子息もいる。元市長は子息と共に三万五千ドルを投じ、リヒテンシュタインに戦争被害者の孤児福祉財団を創立した。
元市長は同子息を同伴し、世界中を資金カンパで歩いたらしい。世界には戦災孤児が多数、放置されている。同財団は創立後、二年で財政難のため閉鎖した。慈善目的の財団設立なのか、不正資金の隠れ蓑なのか判然としない。
ガルップ社の調査によれば、不正資金と汚職構造のガンとして政党が指摘されている。政党を舞台にした不正資金の動きは絶えない。次が警察、国会、裁判所。続いて税務署、税関、医療機関、教育機関の順。政治家の汚職は、国家そのものを腐敗させる。
政治献金は、世界中で深刻な問題とされる。汚職は政治家個人の問題より構造的問題とされる。個人を告発しても、その周囲に大規模で複雑な組織がある。個人は氷山の一角で、汚職そのものは解決されない。
南米の場合、汚職天国はコロンビア、アルゼンチン、ペルー、ボリビア、ブラジルの順。ヨーロッパの汚職天国は、ウクライナ、ポーランド、フランス、スペインの順。