12月10日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】地球の温暖化が確実に進行している。アルゼンチンの首都ブエノス・アイレス市で六日から十七日までの日程で、世界環境会議が開催されている。これには一九九七年に京都議定書に署名し、それぞれの国会で批准を受けた百六十カ国を含む百八十カ国が参加して環境問題を討議する。
これに先立ち科学分野では世界的権威のネイチャー誌に掲載された気象学専門家の論文によると、地球の温度は過去百年に〇・六度C上昇しているが、今世紀末までに一・四度から五・八度上昇すると予測している。これにより地球の気候分布は変化をきたし、氷河が溶けて海水は八センチから十センチ上昇して海岸地帯に影響を与えるだろうとみられている。
昨年、ヨーロッパを襲った猛暑は過去五百年間で最悪のものとなり、死者は二万人を超えた。さらにインドや中国では豪雨で洪水となり、今年フィリピンや日本、韓国を襲った大型台風の異常発生などは、地球温暖化による兆候だと指摘している。
これを受けてサンパウロ大学(USP)の気象学および自然環境の専門筋は、二〇八〇年までにブラジルの気温は一・三度から一・七度上昇し、二酸化炭素(CO2)は現在の量から倍以上に増えるとみる一方、自然環境とくにアマゾンの森林は開発による伐採と火災などで二〇%から三〇%減少すると見られている。
アマゾンの森は地球の酸素の一大供給源となっていることから自然破壊は脅威となる。さらにアマゾン地帯は雨量が少ないことから森林の回復に時間がかかるばかりではなく気流に変化をきたし、このため北東部はさらなる干ばつに見舞われ住民の死活問題となる。政府も関係者も事の重大性に気が付いていないと警告を発している。
また南部や中西部では海から寄せてくる熱風で暴風雨などが多発するとみている。サンタ・カタリーナ州は今年、ブラジルで初めてサイクロンの被害に見舞われたが、将来はこのほかハリケーンなどが発生する危険性が高いと予想している。また氷河が溶けて海面が五十センチから一メートル上昇し、海岸線の地形が変化し、海洋環境地図も塗り変わるだろうとしている。
さらに農産物への影響は大きく、気温が平均四度以上上昇した場合、中西部のコーヒーは壊滅的打撃を受け、とくにサンパウロ州のコーヒー園は全滅するだろうと予測している。いっぽうで大豆には恵みの気候となり、五十年後には二一%の増産が見込まれており、大豆はブラジル農業の花形の地位を確立する。
反面、小麦やトウモロコシは三〇%から一五%の減収となる。これを受けて農業界では、自然現象は人間の能力を超えるものであり、自然に適応した作物の開発を今から手がけていくべきだとの認識を示している。