12月7日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙六日】国際情勢の緊迫化に伴い政府は四日、国家防衛計画(PNID)の強化を二〇〇五年早々にも打ち出し、軍事目的の兵器生産を本格化することを明らかにした。アレンカール国防相は四日、国内軍事産業活性化のため直ちに三十億ドルを投入して兵器生産を始める意向だと述べた。具体案は九月までに、三軍参謀部の意見を入れて決定する。ルーラ大統領はかつて金属労組の代表として、暴力をあおるという理由で軍事産業の発展に反対していた。
ブラジル軍事産業は八五年まで、世界五大産軍複合体の一つと見なされた。エンブラエル元航空公団やエンジェーザ社、アヴィブラス社の三社が下請け百二十社と従業員三万人を抱え、年間十億ドルの兵器を輸出していた。PNIDは二十年後の現在、往年のライバルであった現大統領を迎え、根底から変わろうとしている。
PNIDには傘下ハイテク企業の技術協力による技術高度化、装備の高性能化計画がある。国内生産が不可能な部品は、外国企業の協力も要請する。兵器産業連盟(ABIMDE)によれば、ハイテク指導で協力する研究機関は、直接と間接で三百カ所以上に上るという。PNIDの始動で研究機関は、さらに十万人の研究員を雇用することになるようだ。
国際入札の参加を検討しているのは、特に雲行き険悪化で注目を集める中東、極東、アフリカ、アジア地域など。同地域は兵器の供給とアフター・サービスで、一二年までに一千三百億ドルの発注が見込まれる。〇七年までに各種爆撃機、超音速戦闘機などを含め二百五十機の打診がある。
同計画はヴィエガ前国防相の辞任で中断し、国防相兼任で就任したアレンカール副大統領は軍事問題に不案内だという。政府内に軍事専門家と外部専門家の委員会が結成され、情報収集や予算編成など詰めの会議を行った。またABIMDEは、三百四種の輸出用兵器リストを用意した。
閉業に追い込まれたエンジェーザ社は、空の会議室と呼ばれるボーイング707機を保有していた。同機の中はありとあらゆる盗聴活動から隔離され、受注契約を密約できた。九〇年代にはイラクやリビアなど十九カ国から装甲車カスカベル、ジャララッカなどの購入引き合いが多数あった。エンジェーザ社は、イラクの一億一千万ドル、サウジ・アラビアの三十五億ドルの債務不履行で倒産した。
アヴィブラスも和議に入ったが、技術部門を残し延命した。同社はミサイルの発射装置を得意とし、湾岸戦争ではイラク側へ大量に供与した。二百五十キロメートル射程で四種のミサイルを発射できる大型装置や、宇宙衛星のデジタル写真を解読し戦闘体制を指揮する移動式司令塔も製造した。
国防相兼副大統領は、軍事産業の活性化がブラジル軍の装備近代化と技術革新、雇用創出のためにも有効であると述べた。米政府は世界の平和維持のためと称して、莫大な軍事予算を計上している。軍事目的ではなく平和目的だとしてウラン弾を輸出し国家予算を潤していると、副大統領は軍事産業への偏見を修正するよう訴えた。