12月3日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】ブラジルでは馴染みの薄かったボーナスを今年は大半の企業が支払う見通しで、十三カ月分給与と合わせ二重の収入で一般家庭の財布は潤いを増すことになる。ボーナスは労使間の協定により純益の中から一定の割合で還元するもので、今年は経済成長に伴い利益が増加したことで、一人当たり給与の一・五倍から三倍が支給される見込みだ。この制度は定期昇給の代替案として一九九四年のレアル・プラン実施と共に導入され、今では企業の七〇%が取り入れている。今年のボーナスは制度導入以来最高額を記録し、支給される社員は一足早いサンタクロースの贈り物を手放しで喜んでいる。
今年の経済成長のおかげで一般社員は有史以来最高のボーナスを支給される見通しとなった。十三カ月給与とは別個のボーナスだけに、市民の生活を潤すとともに消費経済に寄与するで来年の経済成長の一翼を担うことになる。このボーナスは企業と労組の取り交わされた労働条件の報酬の一部で、利益の一定割合を従業員に還元するというもの。
このボーナスに関連する統計資料はなく、かつ支給率も企業や業種によって異なるため一概には言い切れないが、人事管理のコンサルテングで世界的権威のデロイッテ社の調査によると、給与の一・五倍から三倍のボーナスが支給される見通しとなった。中にはすでに三分の一を支給した企業もあり、残りは十二月の決算を見た上で、来年の三月までに全額支給される。これでボーナスによる還元は全国で百八十億レアルに達すると予測している。
デロイッテ社は株式上場企業二百五十五社(ペトロブラスを除く)を対象に業容や仮決算書を分析した結果、これらの企業は九月までに総額四百十億レアル以上の純益をあげていることを突き止めた。これは昨年同期比四七・六%の上昇で、九四年のレアル・プラン実施以来最高記録となった。さらにこの純益は全て営業収支の結果であり、生産の上昇が原因となっている。
そもそも従業員への利益還元法(PLR)はレアル・プランと同時に導入された。政府は昇給に伴う労使間のトラブルやストライキを回避するために奨励したが、労組側から絵に書いた餅だと相手にされなかった。当時はわずか九%の優良企業が導入したに過ぎない。これが今年は七〇%に上昇している。(昨年は六四%だった)。
銀行に次いで二番目に高い純益率を挙げた鉄鋼金属業界でボーナスが多く支払われる。とくにサンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市を始めとするABC地区では還元総額が二億レアルとなり昨年の五〇%増となる。これにより平均で給与の一・五倍から三倍のボーナスが支給される。さらに今年二百十万台の生産新記録を樹立した自動車業界では三倍から五倍が支給される。
同市でメルセデス・ベンツのトラックを生産しているダイムラー・クライスラー社では当初三千五百レアルから四千六百レアルのボーナスを想定していたが、予想以上の利益で、上方修正して一率五千レアル以上になる見込みだという。昨年は三千百八十六レアルにとどまった。
さらに同社では来年以降四%の昇給も通告した。同社では輸出とアグロ・ビジネスの好調の余波で生産は昨年の三〇%増の四万九千台を達成した。これに伴い新規に一千五百人を採用し、全従業員数は一万一千五百人となった。同社の社員は「ボーナスで借金を返済し、ナタールのプレゼントを買って残りはマイホーム購入資金用にポウパンサ貯金に入れておく」と、一足早いサンタさんの贈り物に恵比寿顔を見せている。