11月30日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】二十七日夜にサンパウロ市全域を襲った集中豪雨により、各所で浸水騒ぎや通行止めなどが相次ぎ、市内は麻痺状態となった。毎年の恒例行事と揶揄する向きもあるが、降雨に無防備な大都市の恥部をまたもさらけ出した。とくに市民が呆れ返ったのは二カ月前に開通したばかりのレボウサス大通りの地下道トンネルで、二メートル以上の浸水で走行中の車数台が身動きできなくなり、運転手や同乗者が命からがら逃げ出した。工事の専門家らは設計ミスまたは選挙キャンペーンに間に合わせるために開通を急いだことで手抜き工事があったと見ている。また、アニャンガバウーのトンネルも閉鎖されるなど、二十一カ所が通行止めとなったほか、街路樹が倒れて停電になるなどの被害が続出した。これから本格的な雨季となることから、セーラ新市長の初仕事は水に染まることになりそうだ。
雷を伴った集中豪雨は午後八時十分から九時三十分の間をピークに市内全域に及んだ。市緊急対策課によると、この間に測定された雨量は三十一・三ミリで、十一月の平均雨量だったという。しかし間断なく降り続いたため、排水設備がズサンなラテンアメリカ最大の国際都市に打撃を与えるには充分な雨だった。
市内西部レボウサス大通りにある地下道、フェルナンド・ビイエラ・デ・メロ・トンネルは二メートル以上の浸水となり通行止めとなったほか、走行中だった数台の車が立ち往生、スッポリと水没した車も出た。その中の運転手によると、トンネルに入って二十秒ほどで浸水が始まったので、同乗の子供二人を前後に抱えて車外に出たが、その時には水量は腰のあたりまで上っていたという。さらに前方で濁流に呑まれた子供がいたので夢中で救助に向かったと述懐する。
消防と警察の到着はかなり後だった。このトンネルは本来今月に開通式が予定されていたが、マルタ現市長の選挙宣伝のために工事が早められ、選挙直前に開通した。工事の専門家筋はトンネル内の浸水は初歩的な設計ミスか、手抜き工事が原因だと指摘している。
市当局は声明を発表し、容量オーバーでトンネルの排水が十分に機能しなかったと説明、調査と対策を講じるとの態度を示した。付近の住民は「工事で長期間迷惑をかけておいて、完成してもまだ迷惑をかけるのか」と怒りをあらわにし、「早急に改善しなければアニャンガバウー・トンネルの二の舞になる」と警告した。
そのアニャンガバウー・トンネルも案の定(?)閉鎖された。しかも開通まで十二時間以上もかかった。土曜日の夜半ということもあり通常の渋滞よりはましだったが、それでも市内南北を結ぶ交通の要所のため、混乱をきたした。
中心部に向かう車の列はチラデンテス通りから渋滞が始まったが、トンネルの閉鎖を伝えたのはトンネルの数十メートル手前の電光板だった。このため付近はう回する車で混雑した。抜け道が少ないため一方通行に強引に侵入し、対抗車に怒鳴られる光景も続出した。付近には警官や交通局係官の姿も見えなかったことで、運転者らは、チラデンテス通りに入る時点で閉鎖を知らせると共に、迂回の誘導をすべきだったとして市当局の怠慢を非難していた。
いっぽうで、市内北部と南部で街路樹が倒れて電線を切断したため、数千世帯が停電となった。雨で外出を取り止めた人々はテレビを見る楽しみを奪われた。
また、サンパウロ市近郊のタボン・ダ・セーラでは歩道から滑り落ちて川に呑まれた二十四歳の主婦が死亡し、抱いていた、産まれたばかりの女児が行方不明となった。オザスコ市では川が氾濫し、二百家族が二メートル近くの床上浸水の被害を受けた。幸い負傷者は出なかった。