11月26日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】連日のドル安が懸念されていた外国為替市場だが、二十四日の終値は前日比〇・四%高と持ち直した。一部で噂されていた中銀の買い支えによる市場介入かと思われたが中銀はこれを否定し、引き続き市場介入はあり得ないとの態度を鮮明にした。中銀筋によるとドル相場の反発は財務省が約三十億ドルの買いに入ったためだという。政府は為替売買や金額について公表を控えている。いっぽうでルーラ大統領は、ドル相場は一ドル=二・九〇レアルから三・一〇レアルが好ましいと言及した。さらに全融界では政府の意図はさておき、ドル買いを適切な手段として評価している。
中銀の発表によると、政府はこの二日間で二十九億九千八百万ドルのドル買いを行ったという。使途金について政府は公表を控えているが、十二月に返済期限がくる世銀や米州開発銀行の債務、年末から来年六月までが返済期限のパリクラブの債務および九〇年代に発行した国債の満期支払いに当てる準備金との見方が強い。
ドル相場は二十三日に二・七四四レアルの終値をつけた後、二十四日の市場開けと同時に下げ続け、十時半には二・七三五レアルの最安値となった。その後政府のドル買いが入ったため反発し、結局前日比〇・四%高の二・七五五レアルで取引が終了した。取引所関係筋は上げ幅が僅少だったことから、さらなる政府の買いを期待している。
ルーラ大統領は二十三日、アメリカのブルーンバーグ紙のインタビューでドル相場は二・九〇から三・一〇レアルの間で推移するのが好ましいと語っており、レアル高は経済成長の妨げとなると言及した。
同政権発足以来レアルは累計で二八・五%上昇した。今年は二・九〇から三・一〇レアルで経済成長を遂げており、この相場が二年あるいは三年連続の成長につながることを強調した。さらに経済成長の柱となっている経常収支の黒字維持にも重要だとの姿勢を示した。
このインタビューは中銀が政府のドル買いを行う前日に行われたもので、ルーラ大統領は意図して発言した模様だ。同時に大統領は、中銀は為替政策より金利政策、とくにインフレ抑制に注力すべきとの方向を示した。
これに対し、金融アナリストらは、今回の政府措置は適切と評価した上で、たとえ債務支払いの準備金の手当てという名目はどうであれ、結果的にドル安をストップさせたのは事実で、さらにドル買いによる相場安定が必要との見方を示している。
経済成長および経常収支については歯車が止る心配はないので、本年は楽観視できるとの予想だ。問題は金利政策で、ドル安と金利高はインパクトが強すぎるとしている。このため為替がインフレに与える影響は少なく、卸し売物価の高騰に注意すべきとの見方も出ている。
またドル安による輸入増加は現在のところ脅威とならないが、長期化することで失業が増加し、経済の失速につながると警告している。また輸出の柱である農産品の輸出に打撃を与えるだろうとしている。