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狙われる外国人観光客=リオで被害続出=未成年者の犯行、凶悪化=被害届は氷山の一角

11月26日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】ブラジルの観光地で、外国人観光客を狙う窃盗や強盗事件が多発している。とくに未成年者グループによる犯罪が増えており、武器を使っての凶悪な仕業も目立つ。これから本格的な夏場の行楽シーズンを迎えるに当たり、治安当局は警戒を呼びかけている。とくに世界的に知名度の高いリオ市のコパカバーナ海岸では被害が続出。九月に少年窃盗団が外国人旅行者を襲った映像がテレビニュースで全世界に放送された。また今月に入り、日本人観光者が強盗団に刺された上、逃げる際に自動車にはねられて重傷を負う二重の災難に遭った。さらにスペイン人が抵抗したばかりに頭を撃たれて死亡する事件も起きた。

 リオ市治安当局によると、本年一月から九月までに同市内で二千五百五十三件の窃盗や強盗の被害届が出されたという。これは昨年同期比九・六%の増加となった。事件のほとんどがコパカバーナ海岸で発生、十一月初めのお盆連休だけで二十四件に上った。
 これらの犯行は複数の未成年グループによるもので、物売りの格好をして海水浴客の間を歩き回り、目ぼしい標的を見つけると一斉に集まり盗みを働いて八方に逃げ去る。各グループには麻薬や犯罪組織の組員がリーダーとなり、盗品を買い取ったりシンナーや麻薬を分け与えたりしている。
 当局は十二日からパトロールを強化した結果、一週間で路上生活をしている未成年二百人および成年二十五人を補導した。しかし少年更生施設に送るには、現行犯あるいは逮捕状が必要なため、補導された少年らは市の施設で調書を取られるのみで翌日には自由の身となる。
 当局によると、昨年リオ市を訪れた外国人観光客は百五十万人に上り、ブラジル全国の三分の一に相当する。しかも、窃盗の被害に遭ったとしても海岸で使う「小銭」のため、わずらわしがって被害届けを出さないケースが多いという。したがい前述の被害届けは氷山の一角に過ぎないとの見方を示している。
 犯行グループの一少年はこれを裏付けるように、外国人は隙だらけで、持ち物を海岸に置いたまま全員で海に入ることが多いので簡単に盗めるという。さらに盗難に気付いても騒ぐわけでもなく、もちろん被害届けを出さないので、たとえ警察に捕まっても証拠不十分で直ちに釈放されると語った。いっぽうで外国人にとって「小銭」かも知れぬが、我々にとっては一カ月分の生活費になることもあるので、この商売は当分やめられないと述懐している。
 最近は麻薬組織同士の対立から未成年グループも武器を所持し、手口が凶悪化している。九月にTVグローボ局が放送した白昼の集団強盗では武器を使っていなかったが、今月十二日には日本人観光客がナイフで刺された。夜散歩に出た所をグループに囲まれたが、所持金がなかったことに腹を立てた一人が刺したもの、観光客は逃げる途中で自動車にはねられ、刺し傷とともに重傷を負った。二十一日現在、集中治療室にいるものの生命の危険からは脱したとのこと。このニュースが全世界に流れたことで、これを機に警察のパトロールが強化され、少年らの補導が展開された。
 さらに十九日、スペイン人の観光客が三人組に襲われ、カメラを奪おうとしたところを抵抗したため、ピストルで頭を撃たれて死亡する事件が発生した。両事件とも犯人は逮捕された。
 当局は幾度となくホテルのオーナーらと会合し、未成年らの雇用を依頼し、観光客に注意を促すよう要請してきた。しかしホテル側は以前、不良少年を下働きに雇ったことがあるが、ホテルの物品盗みの常習犯になったことから解雇したという。海岸を散歩していた外国人観光客は、本国の旅行社から注意書をもらったが、どの国でも起こり得る常識的な事で、リオのホテルでは何も聞いていないという。犯罪の実態を知り驚いた様子だった。