11月25日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】サンパウロ州の財界は政府に対し、対外貿易交渉の政策変更を求める勧告書を準備していることを明らかにした。内容についてはそれぞれ専門分野で話し合いが行われ、近日中にとりまとめるとしている。骨子はメルコスル内の政府の立場と、先に中国とロシアで取り交された二国間協定に関連するもので、「弱腰外交」との意見が大半を占めている。とくに二国間協定については、政治的歩みよりは評価するものの、輸出入に関しては牛肉問題に固執し過ぎ、工業製品などの門戸開放についての交渉はかやの外に置かれたと、批判の声が強い。
ブラジル貿易協会(AEB)とサンパウロ州工業連盟(FIESP)は連名で政府に対し、これまでの対外貿易交渉の見直しと改善を求める勧告書を提出することを決定、各専門部会で勧告内容を検討中であることを明らかにした。骨子はメルコス域内での取り決めの見直しと二国間協定に関するもので、政府の弱腰を改め、広い視野に立っての交渉を求めるもの。
メルコスルに関しては各国間の自由取り引きを求める意向だ。現在域内では項目ごとに関係国が複数でテーブルを囲み、取り決めを行っているが、最大の供給国であるブラジルにとっては取り引きが限定されている。このためブラジルは二カ国間で自由に協定を結ぶべきだと指摘している。とくに最近のアルゼンチンのブラジル製品への規制、とくに靴や電気製品の関税障壁や輸入枠設定は国産品の過保護とする声が強い。
いっぽうで二国間協定については、世界の風潮に完全に立ち遅れており、対外交渉の推進を具申する意向を示している。同協会によると、ブラジルがこれまで具体的内容を盛り込んだ二カ国間協定書を締結したのはインドと南アフリカの二カ国のみ。これに対しロシアは十二カ国協定により、米国から牛肉、EUから鶏肉と必要物資をしっかりと確保している。
先に来伯した中国とロシアの両首脳との間で取り交した二国間協定の覚え書も、相手国は要求が通り訪伯の成果を挙げたのに対し、ブラジルは尻つぼみの感がぬぐえないとの見方が大勢を占めている。
中国に関しては、中国が最大目的とした経済市場の認識をブラジルが確認したこと、鉄鉱石などの資源確保と投資の足固めをしたのに対し、ブラジル側は牛肉と鶏肉の輸出に終始した。その目的は達したものの、同協会内では、大豆の貸物引き取り拒否の例もあり、検疫をたてとした契約不履行の恐れが多分にあるとしている。
現にロシアとの間でブラジルはこの問題に直面しており、一部解禁となったものの、中国が相手だとより厳しい検疫と衛生管理が求められるとの見方を示している。さらに一部では、中国は遅かれ早かれ、必要物資確保のために、向こうから牛肉を求めてくるとして、ブラジル政府はなにも慌てる必要はなかったとの批判も出ている。
ロシアも同様、WTO(世界貿易機構)加盟にブラジルが賛同したことで目的を達し、プーチン大統領はいそいそと第二の目的のリオ観光へと出発した。ブラジル側が牛肉の全面禁輸解除を期待したのが裏目に出た。プーチン大統領は検査が全て終了し、狂牛病の疑いがないとの報告があって後、解禁に踏み切るとの態度を示した。これに対し畜産業界では、解禁を待ってからWTO加盟問題の返答をするという駈け引きがあっても良かったのではとしている。
両国とも見返りにブラジルの国連安保理の常任理事国入りを後押しすることで覚え書に署名したが、同協会および同連盟は、実際に両国の動きを確かめた上で、他の項目を実行に移すべきとの慎重論が強い。