11月23日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】ドル相場が十一月に入り平均一ドル二・八一レアルで推移し、先週は一時二・七五二レアルと過去四年間で最低のドル安となったことから、輸出業界に衝撃が走り、先行きにかげりが出ている。ブラジル経済回復の柱とも言える輸出の足を引っ張ることで、経済成長にも影響が出る。現在の所、長期契約を結んでいる企業が多いため、貿易収支は黒字を保っているものの、ドル安レアル高が長期化すれば、中銀の外為相場介入は必至と関係筋は見ている。ドル安は世界的傾向で、米連邦準備理事会(FRB、ブラジルでは略称FED)が、米国経済の見通しを悲観視したのが起因となった。
今月入っての外国為替市場は急速なドル安で取引きが推移し、先週は一時一ドル二・七五二レアルの最安値をつけた。その後より戻し、十九日の最終値は二・七八六レアルで引けた。これにより十一月の平均値は二・八一レアルとなり、過去四年間の最安値を示した。これまでの平均相場の最高値は二〇〇二年の三・四五レアル(ブラデスコ調査)で、二〇〇三年は三・二三レアルだった。
今年一月に入り二・九三レアルとなったものの、二月には三・〇〇レアルとし、三月と四月はそれぞれ二・九七、二・九八レアルと横ばいで推移した。しかし五月に三・二〇レアルに急騰し、六月と七月、八月も三レアル台となった。九月と十月は二・九〇レアルと若干の下げとなった後、十一月に急落した。
これを受けてブラジル輸出入業者協会(AEB)は、本年いっぱいはドラスティックな影響は出ないとの見方を示している。これまでの輸出努力により長期契約を結んでいる企業が多く、値段の設定もある程度、為替に幅をもたせているという。しかし輸出の割合が大きい企業や中小企業の中には、為替差損により、これまでの利益や準備金をはき出している所も見え始めている。こうした背景のもと、ドル安が長期化すれば、中銀の買い介入が必至となってくることを同協会は強調した。
十一月二週目を終えて、ブラジルの輸出額は一日平均四億二千百万ドルとなり、第2・四半期の水準を維持するとともに、昨年同期比四一%の増加を示した。しかし企業によっては内情がさまざまだ。
アレンカール副大統領一族が経営するコテミナスは織維業界有数の輸出企業だが、輸出に占める割合が第1・四半期の五三%から第3・四半期には三八%へと低下し、為替相場で国際競争力が低下したことを痛感している。また縫製のレスリエでは、輸出価格を一ドル三・〇〇レアルで設定していることから為替差損が生じているが、操業の継続と従業員の給与支払いのために輸出を続行しているという。いっぽうで、輸出シェアーの低い企業も一様に為替設定を二・九〇から三・〇〇レアルとしているが、せっかく築いた輸出市場を失うわけにいかないとして、耐えて行くとの方針を示している。
また、輸入品との競合を危惧している企業も多い。薬品原料メーカーのノルチックでは、世界的に勢力を伸ばしているインドや中国の輸入品価格に対抗出来なくなったと天を仰いでいる。
今回のドル安は、アメリカのブッシュ大統領の再選が決まったことで、FRBのグリーンスパン議長が、アメリカの経常収支は改善しないと悲観論が波及し、世界各国でドル不信から売りが殺到したため。
ユーロは八月に一ユーロ一・二四ドルだったのが、十九日には一・三〇五ドルの五・二%の高騰となった。二〇〇二年初めの〇・八六ドルから比べると五〇%の上昇となっている。円は百十一円で推移してきたが、十九日は百三円と円高ドル安となった。これを受けてドイツのベルリンで開催されているG20(財務相および中銀総裁会議)でも急拠、為替問題が討議されることになり、今後の動向が注目されている。