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労組委員長の息子を誘拐=「首を切断する」と脅す=イラク人質事件を模倣か

11月20日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】サンパウロ州軍警誘拐防止課は十八日、十日前に誘拐されたW・M・B(学生、22)を無事救出したことを明らかにした。誘拐は身代金目的で、家族のもとに掛かった電話の内容や声で六人のプロ集団の仕業とみて警察は極秘裏に捜査を進めてきた。
 誘拐された学生の父親がサンパウロ州金属工業労働組合の委員長だったため、組合内のトラブルや怨恨の可能性もあったが、身代金を要求してきたことから、警察は営利誘拐に切り換えて非公開捜査とした。
 同委員長によると、犯人らは三度電話連絡し、要求を呑まなければ息子の首を切断し、お盆にのせて送り届けると脅かした。さらにビデオテープを送り、頭にピストルを突き付けられ上半身裸になってズボンを下した映像を見せ、まだ息子は五体満足の状態だとのメッセージを添えた。
 父親と共に成り行きを見守ってきた全国労組フォルサ・シンジカルの通称パウリーニョ委員長は、これら一連の脅迫をイラクの反政府武装勢力が行っている外国人拉置事件の手口そっくりとして、首を切断する脅しは、日本人旅行者の香田さん殺害を摸放したものと強調している。
 誘拐された学生は十日午前、サンパウロ市サント・アマーロ区で自家用車「ポロ」を運転中、前後を犯人一味らの車に挟まれ、拉致された。その後カポン・レドンド区ジャルジン・ピラポリーニャのファベラの掘立小屋に手錠をかけられ、黒いサングラスをかけさせられて監禁された。
 その間、犯人らは父親に電話で八十万レアルの身代金を要求したが、父親は十三ヵ月分給料を含めても一万レアルしかないとして交渉は進展せず、十一日を最後に連絡が途絶えた。警察は密告電話の情報をもとに監禁場所を急襲し、見張り番と思われる二人と銃撃戦の末に射殺し、学生を救出した。学生にけがはなかった。
 父親は息子が生き返ったと、息子が誕生した時の喜びを思い出したと語った。またパウリーニョ委員長は、警察の努力を手放しで誉めたたえた。