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ブラジル中国=2国間協定に調印=広い分野で提携へ=中国は資源確保で成果=ブラジル工業界は不満表明

11月17日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】六日間の公式日程で十一日に来伯した中国の胡錦涛国家主席は十二日、ブラジリア市のプラナルト官でルーラ大統領と会談した後、二国間協定書に調印した。経済パートナーになることで、中国は思惑通り資源確保という大きな目的を達した。見返りにブラジルは課題とされてきた牛肉と鶏肉の輸出が自由化されるなど、貿易の拡大が実現することになる。協定書は十一カ条の骨子からなり、農業からエネルギー、果ては人工衛星までに及ぶ広範囲なものとなった。国際犯罪防止も含まれた。いっぽうで、サンパウロ州工業連盟は、この協定ではアンチ・ダンピングの権利が保障されないとの抗議声明書を発表した。これに対し政府は、国内産業の保護に万全を期すとの態度を明らかにした。同主席は十六日、次の訪問地アルゼンチンに向け離伯する。

 協定書に署名した後、ルーラ大統領は演説の中で、北半球と南半球の将来性のある発展途上二カ国がパートナーになることで、今後の世界経済地図は塗り変わるだろうと述べた。さらに今回の協定でインフラ整備に百億ドルの約束を取り付け、両国企業間の合弁事業について大型投資の煮つめに入ることを明らかにした。また牛肉や鶏肉を始めとする貿易の自由化により、今後三年間で両国間の貿易額は二百億ドルに達すると予想され、現在の約二・五倍の増加となることを強調した。
 いっぽうで胡主席は新しい時代にふさわしい両国の協定だとし、ブラジルへの投資は惜しまないとの考えを表明した。さらにラテン・アメリカ諸国との友好を深めるためにブラジルを拠点としたいとの態度を明らかにした。
 協定書の概要は、
一、 商取引および投資において、ブラジルは中国を経済市場のパートナーとして認識する。
二、 牛肉輸出の検疫ならびに衛生管理を図る。
三、 鶏肉も前項同様。
四、 亡犯罪人の引き渡し。
五、 国際犯罪防止の協力。
六、 人工衛星の共同製作。
七、 人工衛星の映像の共同商業化。
八、 エタノールを含む工業部門での協力。
九、 ブラジルからの畜産品、および中国からの鶏肉加工品の検疫と衛生管理。
十、 中国からの豚肉加工品の検疫、衛生管理。
十一、両国間の観光推進のための相互協力。
このほか、六項目からなる企業間の合弁事業推進の覚え書が調印された。
 これに対し、国際経済と国際情勢の専門家(ブラジル人)は、これまで国際経済界から幾度となく経済封鎖されてきた中国が、ブラジルに経済パートナーとして認められたことで自由貿易が可能となり、課題となっていた資源の確保、とくに鉄鉱石を手中に出来ることが最大の外交成果となった指摘する。
 いっぽうで、この協定で事実上ダンピング提訴が困難となるため、サンパウロ州工業連盟(FIESP)は政府に対し抗議声明を発表した。中国は昨年、世界各国から四十五件のダンピングを提訴されており、このうち二十三件はブラジルが行ったものだった。これに対し政府は国産品の販売に支障がないよう万全の措置を取るとの態度を示している。
 さらに胡主席は国会で演説し、ブラジルの国連安保理入りを推進するとの態度を表明した。その見返りに台湾問題に触れ、台湾は中国の領土で、独立国として認めていないと強調、ブラジルの理解と認識を求めた。