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下肢静脈瘤に新治療=切開手術は必要なし=値段も従来の半額=普及に期待大

健康広場

11月10日(水)

 長年の立ち仕事などで表在静脈が拡張・蛇行してしまう下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)。調理師や店員のほか女性に目立つ病気で、悪化すれば局所手術が必要になる。早期なら注射やレーザーで治療することが可能だ。最近、ブラジルでは、患部への注射が見直されている。秘訣は、薬剤を泡状にすること。手術に代わる治療法として期待が大きい。

 「すばこ」。お年寄りの間で、そう呼ばれることがある。日本の血管外科医が診療する血管疾患の中で、下肢静脈瘤が最も多い。
 足の静脈の弁は、血液の逆流を防ぐ役割を果たしている。長年の立ち仕事などによって、弁が破壊されると静脈血が逆流。心臓に向かって上昇するはずの血液が下肢の下の部分に滞り始め、静脈が拡張・蛇行してしまう。
 この結果(1)むくみ、(2)かゆみ、(3)だるさ、(4)こむら返り(こむらの筋肉が急にけいれんを起こすこと)──などの症状が表れる。重症例では皮膚に潰瘍を生じることも。
 軽症を含めると、血管外科を訪れる患者の三~六人の一人にこれらの症状が認められ、加齢に伴って患者が増えるそうだ。ブラジルでも全人口の三八%が、この病気に悩んでいるという。
 ただ、進行が遅く命に関わる病気でないため、医療従事者の関心が薄い。そのため正確な知識に欠け、無処置のまま放置される危険が高いようだ。
 (1)弾性ストッキングを着用する、(2)表在静脈を抜去する、(3)局所麻酔で大・小伏在静脈の根本を縛る──などの治療方法が取られる。そのうち、人工的に薬剤を静脈に注入し静脈を固めてしまおうというのが、硬化療法だ。
 ブラジルで注目を浴びそうなのは、注入する薬剤が泡状になったもの。ヨーロッパで九〇年代に、導入された。私立病院での手術なら一万二千レアルかかるところ、半額以下の五千レアルで済むという。フォーリャ・レビスタ紙(十月十三日号)に、この最新医療に紹介されている。
 エドゥワルド・トレド・デ・アギアル・サンパウロ大学客員教授(ブラジル脈管学・血管手術協会科学理事)は、硬化療法積極論者。「昔の物質だと血液とすぐに交ぜって、効果が減っていました。新しい薬剤は血液を押し戻すので、効果が大きい」と奨励する。
 程度が二度までの再発率も、三年で六〇%から五年で八%から一〇%に低下するという。
 注射後の生活は、こうだ。初日、患者は包帯を足に巻く。その後は、弾性ストッキングを着用。一日一時間歩くことが薦められる。四週間は、両足を少し上げて就寝する。
 しかし、医者の処方はまちまち。アギアル客員教授は「ある人は四、五日で包帯をとるけど、別の人は三週間つけておくことがある。どれが理想か、まだ分からないのが現状だからです」と明かす。
 ブリガデイロ病院(サンパウロ市ベラ・ヴィスタ区)など一部の医療機関で既に扱っているものの、ANVISA(国家保健衛生局)でまだ認知されていない。薬剤は診療所内で、製造されているだけ。商品化には至っていないのが現実のようだ。
 専門家の意見も賛否両論。シード・シトラングロ脈管学・血管手術協会(SBACV)会長は「治療方法はごく最近のもので、何が起こるか分からない。局所手術がまだ、より安心できる」と慎重な態度。手術に耐えうる健康状態でない患者への代替治療だと位置づける。最新技術が評価され、一般に認められるのにまだ五年ほどかかると見込まれている。
 下肢静脈瘤の程度は次の通り。
 一度=赤、青色の小さな血管が二ミリ~四ミリ蛇行。美容が問題なだけ。
 二度=患部の大きさが四ミリ以上。突き出て曲がっている
 三度=一、二度に加えて浮腫や痛みの原因になる腫れ物が出る。
 四度=患部が着色化(茶色)。皮膚が炎症を起こし、湿疹の元になる。皮膚は弾力性を失い、腫瘍化する。
 五度=潰瘍が出てくる。
 六度=潰瘍が開き、最も深刻な状態。

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