パラグァイ国内最大の日本人移住地「ピラポ」。来年四十五周年を迎える。記念事業は多目的ホール(60×40m、総工費四十億グァラニー)の建設だそうだ。移住地は、現代の望ましい生き方ができる環境を、より短年月につくりあげた▼四十五年前ジャングル(広大な森林)のほかは何もなかった。当時、十五歳だった少女が、六十歳の先月、作文を書いた。「映画でしか見たことがないジャングルだった」「母がボロボロ泣いた。こんな大きな山の中でどうやっていくんだ」▼それが、今はどうだ。あの広い森がなくなって、どこの家にもカミニオンやコチェなどの自家用車が何台もある。重量農機具が揃い、ガスレンジ、電子レンジ、エヤコン、パソコン、NHKだって視聴できる―▼九一年に市制が敷かれ、ピラポ市がスタートしたが、市を牽引しているのは日本人会だ。幼稚園、日本語学校、診療所、薬局などの維持管理のほか、幹線道路の管理まで担う。実質上市の行政をやっている▼パ国の邦字紙は、同移住地はJICAからこの四十年近く、まさに揺りかごから墓場まで、という形容がふさわしい、面倒をみてもらってきた、と指摘する▼さて、サンパウロ州内の日本人移住地は七十五年も経つと、どうか。市長は非日系人、開拓した場所がダム建設によって、水没してしまうとか、年輪が刻まれる。人間の営みによるもので、ではどんな姿が望ましかったなど一概にいえない▼JICAが、移住業務から撤退のあと、ピラポはどうなっていくのか。 (神)
04/11/10