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コラム オーリャ!

 思い出の風景が消えた。装いを新たにしたサンパウロ市ルス駅をみたとき、そう思った。とりわけマウア街側が往時の風情を失ったのは残念だ。
 来伯して、初めてのラジオデッキを買った場所が駅前だった。夜、雑踏の露天商は闇市のようで、輝く裸電球がいまも記憶に残る。その雰囲気も、改修工事が始まり、自然と薄まっていった。
 確かこの辺だったが。駅内にあったはずの、バールまでない。永井荷風は新橋駅について、「無類上等のカフェ」「あらゆる階級の男女が、時としてその波乱ある生涯の一端を傍観させてくれることすらある」と書いた。さしたる用事もなく駅にたたずむのが好きな、わたしの「新橋駅」がルス駅だった。
 昔の魅力を取り戻したというが、今後の「復元」計画の中で、バールか待合室が設置されることを切に願う。  (大)

04/11/9