11月2日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙一日】ラテン・アメリカ最大の都市サンパウロ市の次期市長を決める決選投票が三十一日行われた結果、ジョゼ・セーラ氏(PSDB=ブラジル社会民主党)がマルタ・スプリシー氏(PT=労働者党)を破り当選した。セーラ氏は決選投票の選挙運動開始直後から、支持率の世論調査で優位を保ってきたが、選挙結果は五四・八七%の票を獲得してマルタ氏に約一〇ポイントの差をつけ、下馬評通りとなった。これにより同じくPSDBのアウキミン州知事と、州と市の「アベック政権」が史上初めて誕生した。一方のマルタ氏は市民の支持と運動員に感謝すると共に、「セーラ氏の良政に期待する」と言葉少なめに語った。PT陣営にとっては二年後の大統領選挙でのルーラ現大統領の再選に影響する手痛い敗北となった。
決選投票は即日開票され、一日午前零時二十分時点で九九・九三%が開票された結果、セーラ氏が三百三十二万八千六百六十二票で有効票の五四・八七%を獲得して当選を決めた。マルタ氏は二百七十三万七千二百九十九票の四五・一三%だった。決選投票が決まった時点以降、セーラ氏は世論調査で優位を保ってきた。最後のIBOPEのアンケート調査では九ポイントの差となったが、投票結果はほぼその通りとなった。
セーラ氏は自宅でテレビの開票結果を見ていたが、当確が伝えられた午後九時四十分、自宅玄関に姿を現わし、集まった支持者らを前に、高く両手を挙げて「オブリガード」を連呼した。その後パウリスタ大通りのクラブ・ホムスで行われた党主催の祝勝会の席上で勝利宣言をした後、「発展するサンパウロ市のため、和の政治を目指す」との決意を表明した。
また、サンパウロ市の人口は一千六十万人とブラジル人口の六%を占め、GDP(国内総生産)は三百八十一億ドル(全体の七・七%)に達し、サンパウロ市はさらに躍進するとした上で、ガラス張りの透明な市政を心掛けると強調した。さらに同席したアウキミンサンパウロ州知事の手を取り、盟友とアベック政権を組むことで、州と市のハネムーン時代が到来したと述べた。また、イタリア移民だった父親が身上とした「勤勉」を守り続けていくとした上で、外国あるいは他州からの移民を大事にしていきたいと心の内を吐露した。
マルタ氏はPT幹部と自宅で選挙速報を見ていたが、敗北が確定しても淡々とした表情で、「やるべき事はやった」とし、「しかし戦いはまだ続く」と言明し、政界に身を置くとの態度を示した。また噂されている大臣のポストやフランス大使の話は否定し、サンパウロ市に留まるとの意を表した。ジェノイーノ党首はこれに対し、個人的な意見だとして、PTのサンパウロ州支部長の就任を要請したいとの意向を明らかにした。さらに二〇〇六年の州知事選への立候補もあり得るとの見解を示した。
今回の敗北は一部予想されたとは言え、PTは打撃を受けた。二年後の大統領選挙に再選出馬を表明しているルーラ大統領にとってサンパウロ市の地盤は最大の鍵となる。PSDBはアウキミンサンパウロ州知事の擁立を画策していることから、PT幹部は今回の市長選を大統領選の予備選挙とも受け止めていた。今回の敗北にともないPT幹部は、これまでの「過激な党」のイメージを変える必要があるとの認識を示している。