イラクの武装組織が日本の青年を人質にし「自衛隊の撤退」を要求してきた。もし日本政府が要求を拒否すれば「人質を殺害する」とも脅かしている。拉致されたのは福岡県直方市出身の香田証生さんという二十四歳の人だが、なぜイラクに向かったのかもはっきりしない。ヨルダンのアンマンでは知り合った日本人が「危険だから」と制止したけれども、耳を貸さずにバスに乗ってイラクへ▼町村信孝外相は、香田さんの行動を「理解に苦しむ」と厳しく批判している。イラクは実質的には戦場といってよく、外務省も幾度となく「退避勧告」を出しているし報道陣の取材や行動にも厳しい制限があるのが実情といっていい。四月に起こった高遠菜穂子さんら三人とフリージャーナリスト安田純平さんが拉致されているし、極めて危険な国であることをきちんと認識する必要がある。何のためのイラクか不明だが、香田君の行動には「無理」がある▼首相は「撤退を拒否」と表明したが、これは立派な見識である。自公民は首相発言を支持しているが何故か共産と社民は「自衛隊撤退論」を主張している。これまでにも、武装勢力は約三十ヵ国百五十人以上の外国人を人質にし約三十人を殺害してるいるが、テロの脅かしヤ圧力に屈するわけにはいかない▼香田君の解放と救出に全力を尽くすべきは当然ながら、いわゆる人質と国家としてのイラク政策は峻別する必要がある。自衛隊のイラク派遣は、日本としての決断であり、テロの脅しや圧力で左右されたりしてはいけない。 (遯)
04/10/28